カメラ片手に国内外を渡り歩く旅人、Nachos(ナチョス)さん。
自ら改造したヴァンに乗ってコーストラインを走り、海の前で寝泊まりして、土地土地のサーファーと交流しながら写真を撮っている。
HONEYでも度々紹介している彼女だが、今回は常にアップデートしている現在のライフスタイルと、憧れのヴァンライフにフォーカスして話を聞いた。
写真は35歳のときに、まったくの素人から遊び半分でスタートした。華麗に波に乗る“海の女性”を撮ることに楽しさを見出したNachosさん。写真が写し出す魅力にハマり、少しずつ機材やハウジングを揃え、体当たりでウォーターショットを撮影するようになった。
サーフィンフォトグラファーになろうとする場合、その専門性の高さからプロのアシスタントとしてキャリアを積むのが一般的だが、彼女は周りのアドバイスを聞きながらすべて独学で習得した。バリのサイズのある波から北海道の極寒サーフィンまで、何度も何度もトライして技術を磨いていった。
自分がワクワクすることに導かれ、旅をしながら撮影する。挫折もたくさんあったが情熱の灯火は消えることなく、そんな生活を何年も続けていた。すると気づけばクライアントから仕事を依頼されるようになり、つい最近VANSからもサポートされるようになった。
Nachosさんの自宅は素晴らしいサーフスポットが点在する静岡県浜松市。地元は大好きだが、今は1ヶ月のうち3週間は家を空けてどこかしら旅に出ている。
そんなNachosさんがヴァンを手にしたのはパンデミックの最中だった。
「コロナで自由に海外へ行けなくなって国内を巡ることが多くなったので、中古のヴァンを買いました。自分でDIYをしたからよく見ると雑だけど(笑)、そこも含めて愛おしいんです」
天井と両サイドにウッドが貼り付けられた可愛い車内。木の板で作った簡易ベッドは、ひとりで寝るには十分なスペースがある。お気に入りのボードは上に積み、余ったスペースにはコーヒーセットや夜のビーチで鑑賞するシネマセットを収納している。寝泊まりだけでなく、ビーチライフを最大限楽しめる遊び道具を詰め込んでいるのだ。
愛車のヴァンで国内を回る機会が増えると、ちょっとした変化が起こった。これまで海外に目が向くことが多かったが、日本の素晴らしさと、日本の波のポテンシャルに気づくことができたと言う。
「綺麗な場所やおもしろい人にたくさん出逢えました。日本の良さを再確認できたんです。日本の波も条件があえば、ワールドクラスになることを目の当たりにしました」
この日本の良さ、サーフカルチャーをもっと外に発信していきたいという想いも強くなった。最近少しずつ日本のプロサーファーも海外で活躍するようになってきているが、Nachosさんも世界で活躍するフォトグラファーになりたいという夢が芽生えてきた。
目まぐるしいスピードで成長し、実現していく彼女に対してネガティブな意見をぶつけてくる人もいる。しかし「夢を見るのはタダ」と彼女は言った。
「やりたいことがどんどん出てきて、飽きないんです。表現できる人になりたい。最近まではクライアントや人に呼ばれて地方や海外に行かせてもらっていたけど、これからは自分のプロジェクトで旅をしたいと思っています。もう一度最初の頃のような自分のペースに戻しながら、やりたいことにも時間を費やしていきたいんです」
“諦めないこと” “夢を追い続けること” “動きを止めないこと“。Nachosさんが教えてくれたのは、シンプルだけど大切なことだった。
今日も彼女はヴァンに乗って、どこかの海で写真を撮っているのだろう。
(Alice kazama)