サーファーが「波を予想する」ためには、日々の気象条件を把握し、実際に海を見て経験を積む必要がある。また、より高度な波予想をするには、一定の気象知識も必要だが、気象知識さえあれば、波を予想できるというわけではない。
本コラムでは、サーファー気象予報士である「Kazy」が、15年以上の波予報経験からなる統計知識と、それに基づく波予想のポイントを独自の切り口で紹介。定番のマニュアル知識とは異なる視点のテーマも含め、全10話でお届けします。
最初に
今回は、停滞前線上のメソ低気圧のうねりを説明します。
春や秋の時期は日本付近に前線が発生することが多く、かなり長い時間停滞し、日本の気象とは切っても切れない関係にあります。
この停滞前線自体は期待できるうねりを生成することは稀ですが、前線上に発生したごく小さい低気圧(以下、“メソ低気圧”と表現)によりうねりが発生することがあります。
停滞する前線が現れる時期は波が無いことが多く、サーファーにとってはストレスな時期です。
そんな時期でも、うねりが読めると意外と役に立ちます。
停滞前線を挟んだ風構造
まず、日本付近で停滞前線がある時の風構造です。その時によって変わりますが、おおまかな目安としては下記のように、前線より上(北)側は北東からの風、下(南)側は南西からの風という構造です。
前線特有のうねり知識
次に停滞前線特有のうねりの知識です。
1.風の水平スケールが小さい
台風や低気圧、高気圧といった擾乱と比較すると風の規模が小さいため、うねりの規模も小さいです。
2.動きが無い(遅い)
時間ごとの変化が少ないので毎日目まぐるしくうねりが変わるということもあまり無いです。
3.うねりが減衰し合っている
前線の北側で生成される北寄りのうねりと前線の南側で生成される南寄りのうねりが(若干ですが)お互いに抵抗する形になり、うねりが成長しにくい特徴があります。
前線で期待できる、うねりが入るパターン
前線で期待できる、うねりが入るパターンは天気図でこのようなメソ低気圧が発生した時です。
なぜ期待できるうねりになる?
今まで南北のうねりがお互いに抵抗となっていましたが、下記のように前線上にメソ低気圧が発生すると前線のうねりの特徴が下記のように変化します。
1. 風の水平スケールが大きくなる
2. 東西のうねりの成分に方向が変わり、お互いの抵抗による減衰が発生しにくくなる
前線上メソ低気圧からのうねりを見抜くコツ
次に応用知識ですが、メソ低気圧からのうねりも全部が期待できるというわけではなく、ある程度の条件があります。
大きく分けると下記の3つです。
1.メソ低気圧が発生した位置・・・うねりの先に対象のサーフポイントがあるか?
2.メソ低気圧の移動速度・・・東進速度が速いほど北側のうねりを弱くし、南側のうねりが強くなります。
3.周辺の擾乱・・・周辺にある台風や高気圧などの擾乱からのうねりがメソ低気圧のうねりを弱くor強くします。
今回のポイント
●停滞前線周辺での風構造は水平スケール(東西南北の規模)が小さいことが多い
●停滞前線の北側は北からのうねり、南側は南からのうねりがありそれぞれ抵抗となっている。
●停滞前線上にメソ低気圧ができたらうねりの期待度が上がる可能性あり。
●メソ低気圧によりサイズアップするかはいくつかの条件がある。
次回は「低気圧の位置ごとの波予測」をお届けします。
(Kazy)
【サーファー的気象学】
第1回:数値予報資料のトリセツ
第2回:大気の立体構造をイメージする
第3回:高気圧からのうねりを見抜く
第4回:うねりが入りやすい高気圧の位置
第5回:停滞前線上のメソ低気圧のうねり
第6回:低気圧の位置ごとの波予測
第7回:実践“低気圧のうねり”特集
第8回:台風の嘘ホント
第9回:教科書では教えてくれない台風のうねり
第10回:自然で波を読むって楽しい