サーファーが「波を予想する」ためには、日々の気象条件を把握し、実際に海を見て経験を積む必要がある。また、より高度な波予想をするには、一定の気象知識も必要だが、気象知識さえあれば、波を予想できるというわけではない。
本コラムでは、サーファー気象予報士である「Kazy」が、15年以上の波予報経験からなる統計知識と、それに基づく波予想のポイントを独自の切り口で紹介。定番のマニュアル知識とは異なる視点のテーマも含め、全10話でお届けします。
最初に
前回の『高気圧からのうねりを見抜く』では、風が風波を起こしそれが成長する要素を説明しました。
今回はその成長した風波がうねりとして入ってくる条件と、その条件を満たしているかを見抜く基本的なコツを書いてみました。
今回の内容はいずれも基本的な内容ですが、これ以上の応用的な知識の理解に欠かせない大切な要素になります。
うねりが入りやすい高気圧の位置
例えば下記画像の★の位置(関東)に入るうねりを考えるとします。
日本付近に、下記の位置のどこかに高気圧がある場合に、どの位置が最もうねりが入りやすいかというと下記数字の順番の通りになります。
※(1)は条件によっては1番になることを表しています。
1および2についてが、なぜ1および2となるかについてから説明します。
夏の太平洋高気圧は西に進むことも多々ありますが、基本的に北半球の大規模な擾乱は西から東に進みます。
・ 東に進む速度と高気圧の風が同じ向きになって風を強め、風波をより成長させている
・1の位置から2の位置に移動している時にうねりが生成/成長し、その行き先に関東がある
この二つの理由により、最も基本的にうねりが入りやすい状態といえます。
※擾乱・・・低気圧、高気圧、台風、、、などの総称
1つ目の条件
次に3(1)の位置についてですが、どんな条件の時に1になるかです。
まず1つ目の条件として、高気圧の移動速度が
・ ほとんど停滞(ALMOST STNR)
・ ゆっくり(SLOW)
・ 東進速度が非常に遅い(~15kt)
のどれかであることです。
2つ目の条件
次に2つ目の条件ですが、高気圧の(特に横の)規模が大きいことです。
どれくらい大きいのが良いかですが、大きければ大きいほど良いです。経度線の間隔でいうと、最低でも20度(約2000km)以上の規模だと良いです。
3つ目の条件
次に3つ目の条件として、うねりの伝播経路上にうねりが抑えられてしまう強風エリアが存在しないことです。
4つ目の条件
次に4つ目の条件として、高気圧からのうねりの抵抗になるより大きなうねりが届く擾乱が無いことです。
各種天気図の見方
ここまでは高気圧からのうねりが入りやすい、基本的な条件を説明しました。
それらの条件を見抜く方法を説明します。
ただ、天気図を見るうえでものすごく大切なことがあります。
それは、天気図が必ず大気の状態全てを正確に表しているわけではないということです。
・実況天気図で言えば、最新の天気図だとしても過去のものです。
・予想天気図もそれ通りになる確率は高いですが、必ずしもそうなるわけではありません。
この点をいつも必ず意識することが後々とても大事になります。
まずは地上天気図(ASAS)です。
地上天気図からは下記の3つのことが把握できます。
次に予想天気図(FSAS24、FSAS48)です。
地上天気図からは下記の3つのことが把握できます。
今回のポイント
●うねりが入りやすい高気圧の位置はほぼ決まっている
●実際にうねりが入るかは条件がたくさんある
●天気図は必ずしもすべて正しいわけではない
次回は、いよいよ低気圧のうねりについて。「停滞前線上のメソ低気圧のうねり」をお届けします。
(Kazy)
【サーファー的気象学】
第1回:数値予報資料のトリセツ
第2回:大気の立体構造をイメージする
第3回:高気圧からのうねりを見抜く
第4回:うねりが入りやすい高気圧の位置
第5回:停滞前線上のメソ低気圧のうねり
第6回:低気圧の位置ごとの波予測
第7回:実践“低気圧のうねり”特集
第8回:台風の嘘ホント
第9回:教科書では教えてくれない台風のうねり
第10回:自然で波を読むって楽しい