プレーニングを知れば、見るだけでサーフボードデザインが分かってくる
シリーズ「おいらはサーファーの味方」No. 49
テイクオフ(プレーニング)の早いサーフボード
『プレーニングを理解してサーフィンの上達に生かそう』というのがこのコラムのテーマだ。パート1では大きな反響をいただきました、この場をお借りしてお礼申し上げます。
さて、繰り返すけどサーフィンの世界ではこのプレーニングという言葉があまり使われてこなかった。いや、あまりというよりも全く語られていないと言った方が近いかな。なぜならば『テイクオフ』という言葉でプレーニングを表現していたからだ。
でもテイクオフというと日本語に訳せば『離陸』で飛行機ならば飛び立つ瞬間だけを指す。サーフィンの場合も波を捕らえた瞬間がテイクオフで、滑っているときはテイクオフとは言わない、あえていうならテイクオフ後かもしくはライディング中かな。でも説明がややこしくなるのでサーフィンのテイクオフはプレーニングの一部、つまりプレーニングの始まりだとここではしてほしい。
パート1ではプレーニングのメカニズムを解説した。サーフボードの滑走は手漕ぎボートではなく、むしろ飛行機に近いという驚くべき事実を公表し大反響を得た。かどうか分からないけど一部のマニアックなサーファーたちには『へ〜』だったようだ。
ということで、パート2ではサーフボードデザインとプレーニングを考えてみたいと思うが、今回は『テイクオフの早さ』だけに集中したい。なぜならば、早いテイクオフはサーファーにとって永遠のテーマだし、サーフィンの90%はテイクオフで決まると言っても過言ではないからね。ではテイクオフの早いサーフボードとはどのようなデザインかを考えてみよう。ちなみに、早いテイクオフで一番重要なのはサーファーの経験とフィジカル面なのだけれど、脱線するのであえてここでは話題にしない。
さて、結論から先に言うと、『ノーズとテールがワイドで、ロッカー(ボトムカーブ)がストレート』のサーフボードはテイクオフが早い。その代表格はというと、誰もが思い浮かべると思うけどロングボードだ。なぜロングは早いのか?ロングボードのテイクオフの早さの理由は『浮力』だと思っている人は多いだろう。もちろん浮力も重要で正解なんだけど、じつはノーズとテールやロッカーのデザインもテイクオフの早さに関係している。その理由が二つある。
テイクオフの早さは浮力だけじゃないという2つの理由
1つはボトムが広いと水がたくさん流れて揚力が増す。
仮に、長さと最大幅そして浮力が同じサーフボードが2つあったとする。一本はロングボードでもう1つはガンだとしよう、テイクオフはロングボードの方がだんぜん早い。じっさいに乗り比べれば、すぐに分かるんだけど、これはロングの方がボトムの面積が広く、水がたくさん通過しプレーニング性能が高いからだ。例えれば、飛行機の機体の重さが同じならば、翼の大きい方がより揚力を得て高く飛ぶということと同じ。
(しかし、テイクオフしてからのダウンザラインはロングボードよりもガンの方が早い、加速するときの摩擦抵抗に違いが出るからだ。その摩擦抵抗についてはいずれ別の機会に…)
2つ目は、ロッカーがストレートだと水の反発を得やすい。
パート1で示した翼の断面図を思いだしてほしい。飛行機の翼の下面はストレートだ。それは空気の反発を多く得て揚力としているからだ。翼の上面は丸くなっていて空気の反発が弱い、だから飛行機はプレーニングして空を飛ぶ。つまりボトムカーブはストレート(特にテールロッカー図1参照)の方がテイクオフは早い。
まとめ
テイクオフはサーフボードの浮力だけではなく、テールやノーズの幅も関係してくるということが理解できただろうか?プレーニングを理解してサーフボードデザインの意図を理解できるようになれば、君のサーフィンセンスもより一層ディープになる。パート3ではプレーニングを応用したサーフィンのスキルアップについて解説します。
補足
サーフボードの長さと幅には黄金比率があります。つまり幅に対して長すぎたり短すぎたり、または長さに対して狭すぎたり広すぎたりしても効率が悪くなりプレーニング性能に影響を及ぼします。
(李リョウ)