サーフィンは『スタンス』さえ決まれば、恐れるものは他にない
シリーズ「おいらはサーファーの味方」No. 44
『カンにたよらない「ポップアップ」その一』では正しいポップアップのしかたを説明した。その二では正しいポップアップでスタンスをより確実にする方法を詳しく解説したい。
さて、繰り返すけれどサーフライディングの成功の鍵は、スタンスが一発で決まるかどうかに掛かっている。スタンスを失敗するとライディングに集中できず、修正に時間がかかり、時すでに遅し、となってしまう。
しかしそんな重要なテクニックでありながら、ポップアップをカンに頼って行っているサーファーが実に多く、どうポップアップしているか自分で説明ができない人がほとんどだ。自分のポップアップを理解しておくのは、正しいスタンスを確実(100%)に近づけるための重要なポイントである。
スタンスの失敗それは前立ち
ポップアップからのスタンスの失敗は90%以上が「前立ち」だ。正しいスタンスの位置よりも前に立ってしまうというミス。その原因の多くが、サーフボードを持つ位置で、早く立とうとする意識によって前立ちは起こりやすいと思われる。
「肘を引く」それだけでスタンスが決まりだす
前立ちをしてしまうとフロントサイドではアップアンドダウンによる加速はできるが、スナッピーなトップターンが難しくなる。また、バックサイドの場合はフェイスを横に滑ることはできても、ボトムにしっかり降りてバーチカルなターンが狙えなくなる。
さらに注意したいのは前立ちが癖になってしまうことだ。前立ちが癖になると、常に後足に荷重するようになってしまう。バックサイドを苦手とするサーファーの原因の多くが前立ちによるものだ。
『カンにたよらないポップアップその一』で解説したように、肘を引き、腕を伸ばし、前足をみぞおちのところへ置くイメージでポップアップすると、正しいスタンスを得ることができる。そのときにノーズが浮くような違和感を感じるようであれば、スタンスの荷重が後ろになってしまっている。
「みぞおち」があった所に前足を持っていくだけ、簡単だ!
海のなかでテイクオフをするときは、集中しているために、ポップアップのことを細かく考えている余裕はない。そのために陸上でポップアップの練習をして体にその感覚を染み込ませる必要がある。
つまり考えなくても身体が正しくポップアップするように練習することが重要。じっさい陸上でやってみるとポップアップの難しさを痛感するだろう、しかしコツが分かってくると簡単に立てるようになる。たった1日1回でもポップアップの練習は続けて背筋の強化を心がけたい。
ポップアップの練習には「1、2、3」と心の中でつぶやくのが効果的だ。「1(肘引く)、2(肘伸ばす)、3(みぞおち)」と数えてリズムよく立つ。ポップアップは0.7秒ほどの瞬間芸だから、「1、2、3」と数えていたら遅れてしまう。感覚としては「1.3」くらいになる。
海で、波数はあるけどイマイチのコンデションのときにポップアップの練習をしてみるのもいい。波をメイクすることは二の次にして、テイクオフからのポップアップそしてスタンスまでを反復して練習する。ロングボードでゆっくりポップアップしてみるのもいい。気づかなかった自分の癖を発見することもある。
サーフィンの正しいスタンスは常に変化する
みぞおちに前足を置くことができたら、次は後ろ足。スタンスの取り方には二つのタイプがある。ポップアップからすぐにスタンスを広くしてトラックパッドに足を置く人と、立ったときには狭いスタンスを維持して、数ターン後に後ろ足をテール方向に移動するタイプ。これは正しいスタンスを決めるルーティンのようなものである。
(詳しくは『ポップアップ(テイクオフ)には上達のヒントが隠れている。家で学ぶサーフィン』参照)
サーフィンは五感のバランスで本能的に行っているために個性が出る。波のフェイスからサーフボードに伝わってくる情報を、サーファーは足の裏で感じとってセンシティブにトリミングする。「みぞおち」に前足を置くのは基本ですが、そこからスタンスがどう変化していくかは人によって全く異なり、動画や写真でそこを分析すると大きな違いがあることに気づかされる。
(李リョウ)