テイクオフのふしぎなフィーリングを理解すれば、サーフィンがもっとディープに!
シリーズ「おいらはサーファーの味方」No. 48
テイクオフのときに何が起きているのか?
『プレーニング』サーファーでこの言葉を知る人は少ない。でもプレーニングは『プレーニング=サーフィン』といえるほど重要だ。でもなぜプレーニングという言葉をサーファーは知らないのか?サーファーはそれを『テイクオフ』と呼んでいるからだ。
「なんだ、プレーニングってテイクオフのことか」と思うかもしれない。でもテイクオフのメカニズムを説明できるだろうか?テイクオフのときに、サーフボードの下でいったい何が起こっているのだろうって考えたことある?波待ちのときには水中に沈んでいるサーフボードが、テイクオフをするとパドルがスーっと軽くなってサーフボードが目を覚ましたように滑り出すのはなぜ?そこに立ち上がっても沈まないのはなぜ?
じつはテイクオフのときにパドルがスーッと軽くなる不思議なフィーリングこそが『プレーニングの始まり』だ。サーフィンはプレーニングを起こして海面を『滑走(かっそう)』し高速で進んでいる。手漕ぎボートのように水を左右に押し分けてノロノロと進んでいるのではない。
(船の種類にはプレーニングを利用して滑走する船もある)
飛行機や水切り、もちろんサーフィンもプレーニング
プレーニングはサーフィンだけではない。例えば飛行機もプレーニングによって空を飛んでいる。飛行機を英語でエアープレーンと呼ぶけれど、その意味はエアー(空気)プレーン(プレーニング)からきている。空気の中をプレーニングしているのがエアープレーンつまり飛行機だ。
グライダーを想像して欲しい。グライダーは風を受けて空を飛ぶ。翼に沿って気流が流れると『揚力(ようりょく)』という力が発生してグライダーを持ち上げる。風は目には見えないけれど、翼がその空気の流れのなかでプレーニングを起こしてグライダーは飛ぶ。
川や湖で石を投げて遊ぶ『水切り』もプレーニングの一種だ。石が水面に当たるとその『反発』で跳ね上がるのが水切りだけど、この反発は揚力の一種でつまりプレーニングだ。水切りの石は水圧に反発して飛び上がり、グライダーは翼の下を流れる空気の反発で上昇する。つまり、物体は圧力の小さい方へと移動する性質がありそれを反発と呼ぶ。そして反発によって揚力が生まれる。それがプレー二ングだ。
自動車のタイヤが水たまりで浮いてしまいコントロール不能になるのも水圧に反発するプレーニングだ。自動車学校や運転免許証の講習で、ハイドロプレーニング現象という言葉を聞いたことがある人も多いだろう。
サーフィンは海面をプレーニングで飛んでいる!
じゃあ、サーフィンのプレーニングはどうなっているかを考えてみよう。サーフボードに腹ばいになってパドルをしているときは、プレーニングはまだ起きていない。しかしテイクオフをすると、波に押されて急にパドルが軽くなりサーフボードも滑り出す。これがプレーニングの始まるサインだ。
このときサーフボードは水切りの石のような状態になったと思っていい。波の押す力がサーフボードに加わり、それによって水面との反発(揚力)がサーフボードを持ち上げる。スキップする小石と同じことが起こっているけれどサーフィンの場合はスキップが連続しているからスキップしているように見えていないだけだ。
揚力を得た翼が飛行機を空中へ持ち上げているのと同じく、プレーニング状態のサーフボードとサーファーは非常に軽くなっているような状態とも言える。まるで大空を自由に旋回(せんかい)する飛行機のように、サーファーとサーフボードもプレーニング中は波のフェイスを軽々とカービングすることができる。
まとめ
サーフィンはプレーニングという自然現象で波のフェイスを高速で進むことができる。手漕ぎボートのように水をかき分けて進んでいるのとは全く違う、ということだけは覚えておこう。
「サーフィンはプレーニングでうまくなる!」パート2では「プレーニングとサーフボードデザイン」について考えます。そしてパート3では「サーフィンはプレーニングでスキルアップ」を解説します。
(李リョウ)