Joel Tudor

ロングボーダーが波のサイズアップを苦手とするとき

サーフィンをもっと面白くするビギナー向けのアドバイス


誰もがサーフィンで、遅かれ早かれ直面するのがサイズアップした波への対応だ。とくにロングボードは小波で楽しい反面、波がサイズアップしてくると、大きく重いボードの扱いが難しくなる。
(ちなみに『サイズアップした波』とは腹胸から肩くらいまでを指す)

ショートボードならば、パドルアウトのときダックダイブ(ドルフィン)でボードを波の下に沈められるが、ロングボードでは、ボードを握りしめてひたすら耐えるしかない。もしくは手を離して拷問のようにリーシュに引きずられるか…どちらも苦渋の選択だ。

さてサイズアップした日に、なんとかがんばって沖に出たとしよう。まず驚くことは海の雰囲気が変わることだ。陸から見たときよりも波は大きく、スウェルをパドルで乗り越えるだけで不安にかられてしまう。

それでも勇気を振い出して、目の前に迫ってくる波にテイクオフを試みる。うまくメイクできれば祝杯モードだけれど、たいていのビギナーはワイプアウトだ。波にもみくちゃにされ、そしてリーシュの拷問…。

ワイプアウトのパターンには二つある。一つはパーリングというノーズダイブで、ボードの先端がフェイスに刺さるパターン。もう一つは、ボードには立ったけれども、そのスピードに耐えきれず後方へ尻餅(しりもち)をついて倒れてしまうワイプアウトだ。

最近のロングボーダーは、サイズアップした波がトラウマとなっているのか、膝以下の極小の波を求める人が増えたと聞く。そのような人たちは、腰くらいまでをマックスと感じているようだ。

週末に気分転換でサーフィンを楽しむならば、膝以下で十分かもしれない。しかしながら、あえてひとこと言わせていただくと、極小の波ではフェイスを横にダラダラと滑るのが精一杯で、ノーズまで歩くことは難しい。小波で楽しいロングボーディング、だとしてもちょっと物足りないような気がするがどうだろうか。

波質やコンデションにもよるが、ロングボーディングでリアルに楽しくなってくるのは腰から腹胸そして肩くらいだ。ロングボードはそのくらいの波で性能を発揮するように作られているし、ノーズライドやドロップニーターンという基本のテクニックをスリリングに楽しめるのもそのサイズだ。

三つのヒントでサイズアップを楽しく

そこで、今回のコラムでは腰のサイズをマックスと感じているビギナーロングボーダーのために、サイズアップした波への対応を三つアドバイスしたいと思う。この三つのヒントに取り組めば、腹胸もしくは肩になってもサーフィンが楽しくなるはずだ。

ワイプアウトがトラウマとなって、波がサイズアップすると苦手意識が芽生えてしまうロングボーディング Photo:Ri Ryo

ヒント1, 膝を折るだけ

波がサイズアップすると尻餅をついてしまう。そんな症状のサーファーは、ボードに立ったらすぐに『膝を折って重心を低く』すると簡単に解決する。尻餅の原因は、スタイリッシュを意識し過ぎた『狭いスタンスと直立したフォーム』だ。

極小の波ばかりでサーフしていると、スピードに対応する意識が低いこともあり、スタイリッシュにサーフしようと、テイクオフですぐに直立し狭いスタンスを取る習慣がついてしまう。だが波がサイズアップすると、ロングボードはその重量もあってどんどん加速するから、ライダーはそのスピードに負けないように対応しなければならない。それには膝を折った前傾姿勢が有効だ。

ボードがどんどん加速しても、やがてライダーは2~3秒もするとボードの速度に追いつき(終端速度)、後方から引っ張る重力から解放される。その後は、狭いスタンスで直立してももう倒れない。ちなみに、ロングボードで波をサーフしているときの速度は、サイズアップしてもせいぜい15km/h前後。ママチャリでゆっくり走るくらいだから、過剰に恐れるほどのスピードではない。

重力に引っ張られるから、身体がスピードに追いつくまでは膝を曲げたスタンスで Photo:Ri Ryo

ヒント2, パドルのポジションを後ろへ

極小の波でサーフィンばかりしていると、パドルのポジションが前寄りになりがちだ。テイクオフの早い前寄りのポジションは、一つのテクニックで誤りではない。しかし波がサイズアップするとパーリングを引き起こしやすくなる。さらにボードに立ったときに、必然としてスタンスが前寄りになるから、場合によってはサーフボードのコントロールに難が起きる。

したがって波がサイズアップしたときは、パドルのポジションを少し後ろへ移動させる(2~5cm)。波がサイズアップすれば、パドルのポジションが下がっても、波によってボードが押されるから、テイクオフはそれなりに早くなる。結果としてスタンスも後方になり、イメージとおりにサーフボードは反応するようになる。

波がサイズアップすると、パーリングばかりしてしまう人や、サーフボードを思うようにコントロールできないと感じる人は、パドルのポジションを後ろに下げてテイクオフしてみよう。慣れるまでは違和感を感じるかもしれないが、一度その感覚をつかめば「なるほど」と思うだろう。

波の高さが2倍になると、水量はそれ以上に増大する Photo:Ri Ryo

ヒント3, ノーズを抱えて白波をやり過ごす

波がサイズアップすると、厄介なのがパドルアウトだ。重いロングボードで白波に立ち向かうのは誰だってたいへんだ。上の図のように、波のサイズが2倍になると水の量はそれ以上に増えるから、両手で必死にボードを抑えても吹っ飛ばされてしまう。しかしちょっとしたコツを覚えれば、白波を上手にやり過ごすことができる。

その方法はノーズを脇の下で抱えることだ。大きな白波が迫ってきて吹っ飛ばされそうなときは、パドルを止めてボードから降り、ノーズをそのように抱えると、簡単にやり過ごすことができる。例えれば、暴れ馬の鼻先をしっかり握って抑えるような感じだ。非力なロングボーダーでもこのテクニックは有効だ。ボードが離れなければ、パドルをすぐに再開できて沖へ出る確率が増す。

まとめ

経験の浅いロングボーダーのために三つのヒントをアドバイスさせていただいた。繰り返すが、ロングボードの性能を引き出そうと思ったら腰以上の波が望ましい。小波のときにこの三つのヒントを試してみて、波がサイズアップしたときに慌てないようにしたい。サイズアップした波の苦手意識が払拭できれば、サーフィンは確実にもっと楽しくなる。

(李リョウ)

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