サーフィンの世界チャンピオン、ケリー・スレーターやCJ&ダミアンのホブグッド兄弟を生んだフロリダ州では、サーフィンなどのマリンスポーツが禁止されているビーチがある。
マイアミの北に位置する小さな町ハランデールでは、10年以上前に海岸全域でサーフィンを禁止する法律が作られた。しかし、48年前のあるフロリダの最高裁の判決が明らかになり、このサーフィン禁止令が見直されることになりそうだ。
現在ハランデールの海岸線で禁止されているのはサーフィンだけではない。4年前にスキューバダイビングやカヤック、サップなど、あらゆる「ウォーター・クラフト」(船舶類)の使用を禁止する新たな法律が作られたのだ。
ハランデールビーチで働くライフガードによると、「経験が浅いサーファーやパドルボーダーがいると、こけたときにボードが飛び出して、他の海水浴客に当たる可能性があり、危険だ」と言う。周りに遊泳者がいないところでサーフィンをしていればライフガードが見て見ぬふりをするなど、ある程度許容はされていたものの、近づいた場合は注意して止めさせるなどして、自由にサーフィンができなかったのが実状。
今まで起訴などの大きな問題には発展していないようだが、法律の専門家ボブ・ジャーヴィス氏によると、「岩や船舶と衝突する危険がある場所ではサーフィンを禁止することができても、ある海岸で全面的に禁止するのは不当だ」という。
前例を調べていくなかで、1970年代初頭に当時パームビーチなど3つの海岸で施行されていたサーフィン禁止令がフロリダ最高裁で違法の判決を下されたことが発覚した。それを受けて、フロリダ市の弁護士ジェニファー・メリノさんが現行の法律を変えようと動き出していて、早ければ1か月以内に新しい法案ができるという。
副市長によると、「最高裁の判決で同じような法律が以前に撤廃されたことは認識していなかった。状況は大きく変わりそうだ」と、法律の改正に前向きな姿勢を見せている。「カヤックなど、他の利用者にもビーチを解放する必要があると思う。その時の状況によって、ライフガードの判断で安全を守ってもらいたい」とも述べた。
ハランデールビーチは決してサーフィンで有名なポイントではないし、ハワイやカリフォルニアのようにコンスタントにいい波が来るわけでもない。しかし、ここで争われているのは波の質ではなく、そもそもサーフィンをする自由があるかどうかだ。
波があって、海水浴客が多いビーチでは、安全のため遊泳区域を設けるのは世界の常識。「危険だから」と全面的に禁止するのではなく、安全に多くの利用者が楽しめる方法を見つけてもらいたいものだ。
(THE SURF NEWS編集部)