2019年1月末に観戦チケット販売概要が発表され、いよいよ具体的になってきた2020年東京オリンピック。
史上初の開催となるサーフィンでのメダル獲得に各国も本格的に力を入れ始め、最近では元CT選手のクリス・ギャラガーがアメリカサーフィンチームのヘッドコーチに就任というニュースが入っていたが、今度は元CT選手のブレット・シンプソンがアメリカエリートジュニアナショナルチームのヘッドコーチに就任とWSLが伝えている。
2010年から2015年までワールドツアーを回り、『Vans US Open of Surfing』で2009年、2010年と2年連続のタイトルを獲得した豊富な経験と才能が評価され、アメリカチームのメダル獲得に向けての陣営に加わったブレット。
「ツアーから離れて3年経ち、何か楽しんで出来る仕事を探していたんだ。ツアーに参加していた時は自分がコーチをやるなんて思ってもいなかったよ。でも、コーチについて学び始め、時間を費やすようになるとそれが自然に感じられるようになってきたんだ。ジョーイ・ブラン(クリス・ギャラガーの前のヘッドコーチで1984年のパイプマスターでもある)が辞めてチームの一員であるグレッグ・クルーズとUSAサーフィンを通してこの機会を得た。子供達のために貢献する素晴らしいチャンスだと思ったよ。多くの知識があるのが自分の良い点。他の人とは少し違う視点で見ることも出来るよ」
ハンティントンビーチで育ったブレットのサーフィンはエアリアルやラジカルなムーブを取り入れたカリフォルニアらしいスタイル。
それは『Vans US Open of Surfing』でブレット以後、約10年ぶりに2連覇を達成した五十嵐カノアもインスパイアされている。
「教えるのは最高のジュニアだからね。自分自身も楽しみたいよ。彼らには学び、知識を深めて欲しい。ジュニアだけではなく、その後のQS。やがてはCT。その基礎を築く必要がある。自分にとっても楽しんで全てのバランスをとっていこうと思っている。チームでは年に一度ISAのチャンピオンシップがあり、その他にも国内でのジュニアコンテストがある。トレーニングキャンプも予定しているんだ。子供達が楽しみ、面白さも保ちながらチームを作っていくのが目標。こんな機会を与えられて興奮しているよ」
今回のアメリカエリートジュニアナショナルチームのヘッドコーチ就任。
オリンピックレベルでの成功はどれだけメダルを獲得するかによって定義され、それはプレッシャーにもなるだろうが、ブレットの考えはもっと大きな全体像を見ているようだ。
「もちろん、ヒートに勝って上手くやり、メダルを獲得することは重要さ。自分のリストでもそれを成し遂げることを上位にしている。しかし、技術的、戦略的に覚えることは沢山ある。まだ若く、コンテストに取り組みたい時にそれを準備したい。すぐに結果は出なくても数年後に出るかもしれないし、ツアーで活躍するためには確固たる自信を身につけたい。私は6年間ツアーに参加していたけど、100%自信を持っていたことはなかったんだ。過程は本当に長い。でも、アスリートとして成功するには準備しなければいけないと思う」
2018年11月、カリフォルニア・ハンティントンビーチで開催され、日本が団体金メダルを獲得した『2018 ISA世界ジュニアサーフィン選手権』でも会場でアメリカチームのサポートをしていたブレット。
アスリートとして成功した彼はコーチが付くことで自らのパフォーマンスを次のレベルに引き上げることの長所と短所の両方を知っており、才能あるジュニアを伸ばすための特別な感性も持っている。
ブレットのサポートをどのように活かすかはアスリート次第。それも才能の一つと言える。
「コーチの指示と指導は喜んで受け入れる必要がある。これまで一緒にやってきた子供達のほとんどはオープンで良い意味での批判も受け入れてくれた。もし、改善したいなら弱点を認識してオープンにならないとね。その上で長所は失くさず、活かすこと。自分のサーフィンのあらゆる側面を完成させていく。小さな改善が大きな違いを生むんだよ。今は沢山良い子供がいるし、何か彼らの成長のために出来ればアメリカのサーフィン界の未来は本当に明るいね」
アメリカのエリートジュニアナショナルチームのヘッドコーチに就任されたブレットは2019年2月最初の週末に米オリンピック委員会とのトレーニングのためにコロラドスプリングスへ向かう。
奇しくもこの週末はアメリカ中がお祭り騒ぎになるスーパーボウルが開催される。
対戦カードはAFC王者ニューイングランド・ペイトリオッツ vs NFC王者ロサンゼルス・ラムズ。
実はブレットの父、ビル・シンプソンは元NFLの選手でラムズに5シーズン所属。
当然、シンプソン一家は今でもラムズの熱狂的なファンであり、試合当日の朝には空港にいる予定ながら、早くも現地到着後にどこで試合を見るか心配しており、ラムズに向けてのメッセージは今回のヘッドコーチ就任のことよりも熱が入っていた…。
(空海)