サーフィン映画『free ride』は、世代を超えた普及の名作です。この映画を監督しプロデュースも手がけたビル・デラニー氏が亡くなられたという訃報が届きました。(マット・ワルショーのEOSニュースレターより)。
この映画はさまざまな点で、大きなインパクトを当時のサーフィン界に与え、その影響力はいまも消えてはいません。ダン・マーケルが撮ったオフザウォールでの超スローモーションのウォーターショットは、今でも世界1と言って過言ではないし、オープニングの水中をサーフボードが滑っていくシーンは、サーフィン映画で初の試みであり、当時のサーファーのハートをしっかりと捉えました。
主演の二人のサーファーも新しい世代の幕開けを予言しているし、彼らのライフスタイルの対比も、映画のなかで巧みに演出されています。そしてもちろん映画に挿入された音楽が秀逸で、今でもフリーライド世代の心に深く刻み込まれています。
この映画について語り出したら、我々の世代は止まらなくなってしまいますが、この映画のすばらしさを総括すれば、ビル・デラニーという映像作家のセンスの良さに尽きると私は思っています。
この映画『free ride』は、まだ若かった私がサーフィンの世界に入国するためのパスポートであり、進むべき理想郷を示してくれました。
この映画が初演された時代にサーフィンと出会えたことは、私にとってこの上のない幸運でした。サーファーとしてだけでなく、映像作家としても『free ride』は映画制作のための私の教科書であり続けています。ありがとうビル、君の『free ride』は永遠です。
(李リョウ)
マット・ワルショーのEOSニュースレターより
フィルムメーカーのビル・デラニー氏が亡くなりました。72歳でした。
1977年に初めて上映された彼の作品『free ride』を知るサーファーにとってはショッキングなニュースです。映画『フリーライド』は私(筆者)たち世代の映画だった。『エンドレスサマー』は普及の名作だが、しかし『フリーライド』はベビーブーマー世代後の映画だった、ジェネレーションXにとっての映画『モーメンタム』と同じように。とにかく彼の死は我々世代にとって大きな衝撃だ。『フリーライド』で ラビット・バーソロミューがバリ・サヌールのバレルをサーフするときに語った話を思い出さずにはいられない。
この波をテイクオフしたときはメローなホットドックのような波で最高だった。
海蛇がこの辺りで群れをなして泳いでいると聞いていた。そんな群れが泳いで近づいてきたらヤバイ。だから僕はクルージングしながら蛇の群れがいないか探し、バレルの内側に入るとどんどん中に引きずられていく感じがして、そのまま波の中を進んだ。
I took off on that wave, and it was a mellow hotdog wave, and I was really digging on it, just feeling it out. They said sea snakes run around the place in packs, and if you ever see a pack of sea snakes coming toward ya, it’s a pretty heavy sight. So I was just cruising, looking for any sea snake packs, and I came into the inside, and felt myself getting dragged over this ledge, and I just went with this wave.
『フリーライド』信者ならばこのあとに続くシーンを覚えているだろう。ラビットが底掘れのボキシーなチューブをメイクするスローモーションはサーフィン教のマントラ。
ラビットは私たちがまだ若かった頃のヒーローだった。その理由はこのバレルをメイクしたからというわけではなく、海蛇の群れを上手に避けたということでもない。
デラニーはラビットをこの映画の中でストーリーテラーとして鮮やかに演出し自然に振舞わせたところにすばらしさがある。それはこの映画をグレートと言わせる所以だ。安らかに眠ってくれビル、君がフィルムで成し遂げた偉業に感謝する。映画『free ride』は永遠だ。(一部抄訳)
マット・ワルショー