サーフィンのチャンピオンシップツアーを主催するWSL (World Surf League)は8月21日開幕のCT第7戦『Tahiti Pro Teahupo’o』で史上初となる異色のジャージー「蛍光イエロー」、「蛍光ブルー」、「蛍光パープル」を発表した。
選手のジャージーの他に、大会のマーケティング・キャンペーン全体で「蛍光珊瑚」の新色を採用しているのは世界の珊瑚の危機に焦点を当てるためだと言う。
WSLが様々な環境問題の対策に力を注いでいくため2016年に非営利組織WSL PUREを立ち上げ、今回はタヒチが位置する仏領ポリネシアでも広く分布するサンゴ礁の保護に着手した。
世界中のサンゴ礁が、地球温暖化や海水の酸性化など世界規模の現象や、環境汚染、不適切な開発行為、さらに日焼け止めなどに含まれる化学物質などにも脅かされている。
タヒチ・プロでの取り組み。蛍光珊瑚とは?
タヒチ・プロでは、イベントを通して使い捨てプラスチックの廃止やカーボン・オフセットを行う他に、現地で珊瑚の保護活躍を行う非営利組織「コーラル・ガーデナーズ」の支援を決めた。
高水温による珊瑚の白化現象は良く知られているが、ここで話題となっている蛍光発色は今までにほとんど記録されたことがないため、いまだ謎が多い現象だ。珊瑚が水温の上昇により蛍光で発色する現象が2016年ニューカレドニアでオーシャン・エージェンシーによって記録され、この蛍光タンパクは自分の身を守るための「日焼け止め」のような役割があると考えられている。
地球温暖化を顕著に表している現象で、世界のサンゴ礁の危機を予告しているため、WSLはタヒチ・プロではこの珊瑚の「蛍光発色」を再現して、ジャージーやポスターなどに使用することで、珊瑚が直面している危機を世界に広く伝えたいと言う。
「世界中のサンゴ礁が直面している危機についての意識を広め、仏領ポリネシアでは実際に現場で意義ある活動を支援することができ、とてもワクワクする。」WSL CEO ソフィー・ゴールドシュミット
保護活動にプロサーファーも参加
タヒチ・プロの開幕を目前に、タヒチ出身のプロサーファー、ミシェル・ボウレズを含む数名のプロサーファーがコーラル・ガーデナーズの活動に参加した。タヒチ島の隣に位置するムーレア島で珊瑚の養殖を行い、約2年後には成長した珊瑚を被害を受けた地域に移植する予定だ。
「WSL Pureを通して、地元で珊瑚を移植する活動に参加できて非常にうれしい。時には単純な活動程問題の解決につながり、大きなインパクトがある。」
タヒチ出身プロサーファー、ミシェル・ボウレズ
珊瑚の危機について
地球温暖化によって増加している熱量の約9割を海、特に表層が吸収していることから、その表層に生息するサンゴ礁が特に影響を受けやすい環境にある。過去30年で世界の珊瑚の約5割が死滅したと考えられていて、今後もその速度が収まる見込みはない。
サンゴは生態系の基盤となる生物であり、サンゴが死滅すればそれらを取り巻く生態系も破壊される。サンゴは、100万種の生物、海洋生物の4分の1、そして10億人もの生活を支えているといわれている。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、すでに地球に溜まっている熱量の影響で今後さらに珊瑚の死滅が続き、これからの対策で守れるのは現在生息しているサンゴ礁の約1割~3割程度。地球温暖化対策以外にも、汚染や魚の乱獲など幅広い対策が必要だ。
(ケン・ロウズ)