令和元年11月9日、神奈川県・西湘エリアを代表する海水浴場でありサーフスポットの「大磯海岸」にて、地元サーファーが協力し大規模な「津波対策訓練」が開催された。
今回実施された津波対策訓練は、神奈川県、大磯町が主催するもので「大正型関東地震※」を想定。地震規模はマグニチュード8.2、最大震度は7。
※1923年に発生した大正関東地震の再来型。関東地震は関東大震災を引き起こしたことで知られる。
本訓練を通じて津波に対する早期避難意識の向上と、参加機関の連携体制の強化・検証を目的としたもので、警察、消防はもちろん、海上保安庁や自衛隊などの機関も参加。
また、地方自治体とも密に連携している「大磯サーフィン協会」も、地元サーファーらに協力を呼びかけ、サーフィン中に津波警報が発表された際の避難方法や避難経路、実際に避難にかかる時間などを検証した。
オレンジフラッグは「津波警報発令中」の合図。サーフボードは置いていく
今回の訓練では、am9時よりまず情報伝達訓練からスタート。神奈川県庁より防災行政通信網を通じて各市町庁舎へ情報が伝達、ビーチにも設置されている防災行政無線より大津波警報の発表が伝えられる。
参加したサーファーは通常通り海でサーフィンをし、警報発令と同時に一斉に避難を開始。次々とサーファーが海から上がり、グループ毎の避難場所を目指す。避難のポイントとしては「サーフボードは持って行かず必ず海へ置いていく」こと。
訓練実施による意識の変化と、さらなる課題について
今回、実際に海の中からの避難訓練に参加したサーファーは約30名ほど。当初予定よりも少人数での実施となったが、参加したサーファーは「こうした訓練の参加経験があると本当に避難をする際に大きな違いが出ると思う。」と話す。
また、今回の避難時間目標は、警報発令から6分を想定。参加者のほとんどが、目標である6分以内に避難を終えたものの、「実際に走っていくと避難経路が分かりにくかった」、「ビーチでは足元をとられて走りにくいので、何かしらの対策が必要か」など、訓練終了後も積極的な意見交換が行われていた。
なお今回の津波避難訓練は、大正型地震の発生を想定しているが、これが南海トラフ大地震の規模になると、避難タワーでも高さが足りずさらに高台までの避難が必要とも言われている。しかし、これは参加者のほとんどが理解しており、もしものときはさらに迅速な避難が必要。今回の訓練に参加できたことにより、今後は自分達が声掛け役になることもできる、などと話していたことが印象的だった。
こうして地元ローカルサーファーと行政が連携することにより、このような大規模な訓練が実現。サーファー達の意識が変化することで、もしもの災害時の被害にも大きな差が出るだろう。
地元サーファーの活動といえば、ビーチクリーンなどの印象が強い方もいると思うが、近年はサーフィンを観光資源と捉えている自治体も多く、地元サーファーらの努力や交渉によりトイレやシャワー施設が設置されるケースも少なくない。
今後は、各地にも存在する地元サーファーらの活動も紹介していきたい。
(THE SURF NEWS 編集部)