新型コロナウイルスの感染拡大を懸念して、神奈川県では県内全25か所の海水浴場が今夏の開設を見送っているが、例年海水浴場で講じられる安全対策等がなくなることで、ライフセーバー不在による水難事故、接触事故、飲酒による泥酔客の多発、バーベキュー等による火気事故、ごみの散乱などのリスクが懸念されていた。
それらの対策として、神奈川県は19日に日本ライフセービング協会と包括協定を締結。また、THE SURF NEWSでは、「夏期海岸藤沢モデル2020」を独自で策定した藤沢市をはじめ、鎌倉市、茅ヶ崎市の3市に今夏の対策について聞いた。
◆神奈川県はライフセーバーによるパトロールや、ドローンの活用も検討
6月19日、神奈川県と公益財団法人日本ライフセービング協会(JLA)は包括協定を締結。安全・安心な海岸づくりができるよう相互連携をはかり、今後以下についての取り組みを進めていくという。
(1)海岸の水難事故防止のための安全教育及び知識普及に関すること
(2)海岸の安全管理及び救助救命に関すること
(3)その他、海岸における水難事故防止に資する取組に関すること
また、6月16日に行われた神奈川県議会本会議で、黒岩知事は今夏の海岸の安全対策等について以下の方針を示している。
①海水浴場が開設されないことで例年通りの安全対策等が実施されないことを県内外に広く発信し、遊泳自粛を促す看板を各海岸に多数設置する。
②砂浜での飲酒を控えることやごみの放置を禁止することの自主ルールを地元市町と共に作成し、看板等を設置しながら広く周知する。
③警備員等による海岸パトロールを強化し、密集密接の回避や遊泳自粛や自主ルールの遵守を呼びかけるとともに、水上バイクやサーファーとの接触を防ぐための声掛けをする。
④公益財団法人日本ライフセービング協会(JLA)と包括協定を結び、万一の事故に備え知識の普及啓発や情報発信に連携して取り組むほか、ライフセーバーがパトロールに参加することを検討中。
⑤人が多く集まる海岸では、ドローンを活用した監視・救命活動を検討中。
◆藤沢市の「夏期海岸藤沢モデル2020」
例年、藤沢市の海岸の利用については「藤沢 海・浜ルールブック」に利用方法を定め、また夏期は「藤沢市海水浴場ルール」が適用されていた。
今年はそのルールが適用されなくなることを受けて、藤沢市、海水浴場組合、神奈川ライフセービング協会、藤沢市サーフィン協会で協議を重ね、16日、藤沢市夏期対策協議会は今夏の特例措置として『夏期海岸藤沢モデル2020(藤沢市夏期海岸ルール)』を定めたことを発表した。
条例ではなく罰則などもないが、年間150万人と日本に誇る規模の海水浴客が訪れる藤沢市として、県内の自治体でも一段と早く先手を打つ形で独自で策定した。
THE SURF NEWSの取材に対し、市担当者は「今年は遊泳を推奨するわけではないが、来年以降コロナから回復した際のイメージダウンを避けるためにも、今年来る人には安全に利用してほしい」とルール制定の経緯を語った。
ルールの適用期間は7月1日(水)から8月31日(月)まで、適用範囲は例年の海水浴場エリアとなる。また、海岸利用者の増加が見込まれる7月18日(土)から神奈川県ライフセービング協会からライフセーバーが派遣され、利用者の安全監視・指導を行う。
エリアの境界について
・片瀬西浜海岸・鵠沼海岸
例年の白杭設置場所から片瀬漁港までを海水浴場としていたが、今年は新江ノ島水族館~片瀬漁港までを遊泳可能エリア、新江ノ島水族館~引地川河口がマリンスポーツ可能エリアとなる。マリンスポーツ可能エリア内は状況に応じて遊泳エリアが設定される。
・片瀬東浜
例年の片瀬東浜海水浴場区域が遊泳エリアとなる。
・辻堂海岸
例年の辻堂海水浴場区域が遊泳エリアとなる。
※海象状況によりエリアは変更となる場合もある。
遊泳エリアでの安全対策について
7月18日から8月31日までの間、10時〜15時まで利用用途に合わせてエリアの境界には『Swim Between Flags』の旗が掲げられ、ライフセーバーが旗と旗の間の海域で遊泳客を見守る。
協議会は、波打ち際を起点に沖合に向けて20メートルまでを遊泳エリア、10メートルを緩衝エリアとし、30メートルより沖をマリンスポーツ可能エリアと設定しているが、NSA湘南藤沢支部はサーフボードが遊泳エリアに流れると危険なことから、沖エリアも全面的にサーフィン禁止とすることを発表している。
また、例年、遊泳エリアでも朝夕はマリンスポーツ可能となっていたが、警備の都合上、今年は遊泳エリア内のサーフィン等マリンスポーツは終日自粛を呼びかけている。
夏期海岸藤沢モデル2020詳細:https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/kankou/2020kakitairelease.html
◆鎌倉市は条例制定を検討中
鎌倉市観光課はTHE SURF NEWSの取材に応じ、今夏の海岸利用に関する条例の制定に向けて、現在内容を審査中であり、まだ決定事項はないものの条例概要について回答した。
昨年制定された「鎌倉市公共の場所におけるマナーの向上に関する条例」に、例年海水浴場で禁止事項としていたタバコ・BBQ・飲酒・音響使用などの条項も盛り込むような内容で審査中だという。
海の使用についても、マリンスポーツ可能/禁止区域を設けるなど、利用者が交錯することを避けるための区域分けを検討中。
また、鎌倉市としては藤沢市同様、神奈川県ライフセービング協会に依頼する予定だという。条例の制定は今月中目途とし、決まり次第市HPにも掲載される。
◆茅ヶ崎市の取り組み
6月5日、佐藤光茅ヶ崎市長が「サザンビーチちがさき海水浴場の開設中止に伴う対応」について声明を発表。以下の内容を要請した。
・ 散歩、ジョギング、砂浜での活動については、空いている場所、時間に行い、密集・密接を避けてください。
・ 集団での滞在、滞留となるような、砂浜でのバーベキューの利用は避けてください。
・ 海水浴場が開設していないため、海での遊泳は危険ですのでお控えください。
・ 海岸の美化を保つため、必ずゴミはお持ち帰りください。
6月22日取材時点で、市担当者はその他の取り組みについてはまだ公表できないものの、市長の発信内容に沿った看板などを設置する等を検討中とした。
当初は海水浴場が開設されないことで、どの海岸でもサーフィン可能となることを期待する声もあったが、実際にはビーチを安全・安心できる環境に保つための対策として各エリアで一定程度のルールが設けられることになりそうだ。
各海岸で例年とは異なるルールが適用される見込みのため、引き続き各地の最新情報の収集に努め、地域の状況に配慮した行動が必要となる。
(THE SURF NEWS編集部)