今週のTweed Coast Proで久しぶりにゼッケンに腕を通したジュリアン・ウイルソン(昨年世界ランク11位)。サーフボードやウエットスーツから長年のスポンサーHurleyのロゴが消えていたことに気づいた人が多いのではないだろうか。
突然の変更について本人からオフィシャルな説明はないが、スポーツニュースサイトSporticoの報道によるとハーレーが契約金おおよそ150万米ドルを未払いのまま契約を打ち切ったことに対し、ジュリアンの弁護士らが9月上旬にカリフォルニアの法廷に告訴状を提出した。
2014年に結ばれた7年間の契約では、ハーレーのPR活動への参加やSNSでの投稿の他、年間5つ以上のCTイベントに出場することを条件に年間約150万米ドルに加えて出来高制のボーナスが支払われることなっているらしい。コロナの影響でCTが開催されなかった2020年においてこの条件を満たしていないことを理由にハーレーが契約違反を訴え、一切の支払いを拒んでいるという。
ジュリアンの弁護士によるとハーレーが昨年ブルースター・アライアンスに買収された後、契約内容の変更を要請されたが、ジュリアンは応じなかった。その後景気悪化のため契約金の支払いを6月中旬まで延期することに合意したが、その期限が過ぎても支払いがなく、翌日にハーレーから一方的に契約の破棄を告がれた。
今年に入ってもハーレーがジュリアンの肖像を宣伝に使っていたし、ジュリアンもInstagramなどでハーレーをPRしていたことを踏まえ、ウィルソンは可能な限り契約内容を守っていると主張。しかし、契約には「いかなる理由でプロサーフィン大会に参加しなくなった場合は契約を解除することができる」と明記されていて、これを根拠にハーレーが契約の解除に踏み切ったとみられる。
裁判では「いかなる理由」がどう判断されるかが争点となりそうだ。世界的なパンデミックによりCT自体が開催されなかったため、確かにジュリアンはCTイベントに参加していない。しかし、契約条件を満たすことは不可能な場合、その条件から免除されるという裁判の前例もある。また、ジュリアンは大会以外の条件も満たして、それによってハーレーが利益を得ていることに対して報酬がないことも争いのポイントにもなるだろう。
訴訟の行方はしばらく明らかにならない可能性があるが、昨年からブルースター・アライアンスがスポンサー契約を大幅に切ってきたことから、簡単には譲るとは思えない。
ハーレーのウエブサイトを見るとすでにジュリアンの姿が消えていて、残るCT選手はフィリペ、コロヘ、カリッサの3人だけ。他のサーフチームを見ているとスペインやフランス、ベルギー、ドイツなどからの無名サーファーが目立ち、ビッグネームから多様な若いチームに大幅に路線を変えていることが伺える。
(ケン・ロウズ)