今年5月末、日本事務所を閉鎖したWorld Surf League(以下WSL)は、この度、元プロサーファーであり長期日本在住経験のあるマシュー・ピッツ氏がWSLの日本窓口に就任したことを発表した。
日本事務所閉鎖以降、日本で開催されるWSL主催試合のオペレーション業務等は、オーストラリア・クーランガッタにあるWSLアジアパシフィック(APAC)オフィスにて行われることとなっていたが、今後はマシュー氏がそのAPACオフィスを拠点としながら、日本国内の試合に関する窓口となり関連業務を担っていく。
マシュー・ピッツ氏がTHE SURF NEWSのインタビューに応えた。
「最も重要な役割は、国内のイベントを増やすこと」
– 新WSL日本担当に求められる役割とは?
新しいWSL日本の窓口として求められている役割のなかで一番重要なのは、日本で開催するイベントを増やすことです。
新型コロナウイルスの影響で、現時点で、来季の国内イベントで開催決定しているものは何もありません。全くのゼロの状態です。
今は各国の入国規制がありますが、渡航できるようになったら、日本の宮崎・湘南・千葉・静岡などのイベントプロモーターの方々や、国内イベントを開催するためにご協力いただけるスポンサーの方々にご挨拶に伺います。
また、新たなエリアや県も開拓したいと思っています。日本にずっと住んでる人からもCT選手を輩出したい。日本にはうまい選手もいるのに世界で知られていないことが多い。日本の若手が世界で活躍するためには、もっと国際大会を経験することが必要です。そのために国内でWSLイベントを増やしたいと考えています。
その他にスタッフの育成にも力を入れたいです。例えば、深川達哉プロは現在WSLのインターナショナルジャッジとして活躍しています。このようなスタッフをより多く育成し、ポストを作ることで、今後は日本のプロサーファーがコンペ以外の分野でもキャリアも築けるようにしたいです。
「日本を知らないAPACで、架け橋になりたい」
– APACにおける日本とは?
APACオフィスでは、オーストラリアの他にインドネシアやスリランカ、中国、台湾のイベントを管轄していますが、APACスタッフで日本のことを知っている人が殆どいません。若いスタッフが多く、日本に行ったこともない人が多いです。
– 就任の経緯
今年6月以降、日本もAPAC管轄となることが決まり、APACのゼネラルマネージャーであるアンドリュー・スターク氏より相談を受けました。歴史が長く独特の文化がある日本でのスポンサー営業を進めるにあたり、日本に長期在住経験のある僕が引き受けることになりました。
これまで、WSLのイベントではビーチアナウンサーやWeb配信のキャスターなどをやってきましたが、この新しいポストは僕にとっても新しいチャレンジングな仕事です。でも、日本にはイベントディレクターやジャッジチームなど素晴らしいイベント運営チームの方々が沢山いるので、うまくチームワークを取って進めていきたいです。
「2021年はCTへの大きなチャンスの年になる」
– 今後の日本でのイベント開催予定について
現在はゼロ状態です。2021年の国内イベントは何も決まっていません。来年はオリンピックの関係もあって、開催時期の調整が大きな仕事になりそうです。
開催時期についてはスポンサーにより様々な意向があるようですが、特に五輪前のイベント開催には慎重なところもあるようです。個人的には、選手のためにも波のある8月後半~10月にやれたらよいなと思っています。
新型コロナウイルスの影響で各国の入国規制が続いている状況を踏まえて、来期は予選シリーズ「クオリファイングシリーズ(QS)」も各国の選手だけが出場できるような試合となるかもしれません。各国の試合のポイントをカウントして、WQSランキングを決めるようなイメージです。
来年の8月にハンティントンビーチから始まる、予選シリーズの最高ランク「チャレンジャーシリーズ(CS)」は全部で7~8戦を予定していて、最終戦は12月のハワイとなり、CS上位者はパイプマスターズに出場します。
来季、日本人選手だけのイベントが開催できたら、その日本人選手のなかのトップ数名がCSに出られることとなっており、これは日本人選手にとってとても大きなチャンスです。女子に関しては、まだ決まっていません。
「来年はカリッサムーアが復帰。都筑有夢路は調整中」
– 都筑有夢路の来季について
今年、カリッサ・ムーアが休業することでCT入りを果たした都筑有夢路ですが、来季が始まるにあたってカリッサ・ムーアは復帰する意向を示していて、複雑な調整が続いています。いずれにしても都筑有夢路は何かしらのCTイベントに出場します。
– NSA、JPSAとの3団体の協力体制は?
五輪につながる日本代表の選出について、これまでNSA、JPSA、WSL Japanが3団体で協力してきましたが、今後どうなるかについては現時点ではまだわかりません。
「日本のサーフィン界にとって今は逃してはいけないタイミング」
– 今後の展望
日本人選手のメディア露出がとても増えている今、新型コロナウイルスの問題で確かに営業しずらい一面はありますが、スポンサーを集めるのには好機。日本のサーフィン界にとって今は逃してはいけないタイミングだと思っています。
日本人選手のメディア露出機会が多ければ、大会にもスポンサーが付きやすくなり、より多くの大会を開催することができます。それにより日本人選手がより国際大会の経験を積むことができるし、大会運営スタッフも成長できます。日本にずっと住んでいる人からCT選手を輩出したいのです。そのために何ができるのか、みんなで考えていきたいと思っています。
最後に、これまで日本でのイベント開催に尽力されてきたASPの水垣さんと、WSLジャパンの近江さんにとても感謝しています。本当にありがとうございました。
Matthew Pitts マシュー・ピッツ
オーストラリア・シドニー出身。
1986年からWCTに4年間参戦し、世界トップのプロサーファーとして活躍。91年には日本に移住し、国内のプロサーキットに初の外国人として参戦。95年、99年と年間チャンピオンとなるなど活躍。2000年からは宮崎県の有線テレビ局でリポーターを務め、2004年にシンガーソングライターとしてCDデビューをするなど多彩な一面を持つ。WSLイベントでは、ビーチアナウンサー、WEBキャストを務めた。
(THE SURF NEWS編集部)