プロアスリートが自身や後継者のためにトレーニング施設を設立するのは他のスポーツでは珍しくないことだが、2017年にガブリエル・メディナが地元に開設した「Instituto Gabriel Medina」や、今回紹介するイタロ・フェレイラが地元ブラジルのバイーア・フォルモーザに設立した「Instituto Italo Ferreira」は少し目的が違う。
ブラジルが抱える深刻な問題に関係しているのだ。
2021年2月後半、イタロは自身のYouTubeチャンネルでその思いを公開した。
「今日、私は夢を実現した。
私に与えてくれた全てのものをバイーア・フォルモーザに少しでも恩返ししたい。私の両親はスポーツは子供を変え、若者を形成して機会を提供すると信じていた。
家族はゆりかごであり、土台であると信じている。そして、海は私達に栄養を与えてくれた。
’スポーツ、家族、環境保護’
この3つの柱を信念としてバイーア・フォルモーザのコミュニティのために「Instituto Italo Ferreira」の扉を開くよ。」
イタロ・フェレイラ
ブラジルでは昔から所得格差が大きく、貧富の差は世界最大で、特に近年はその差が拡大していると言われている。
もちろん、プロサッカー選手が億単位という破格な契約金を稼いでいるのはレアケースであり、貧困層が多い地域ではストリートチルドレンや世界最悪の治安も問題視されているのだ。
負のループから抜け出すためにサッカーやサーフィンのプロスポーツ選手を目指す子供達も少なくない。
2019年にワールドタイトルを獲得したイタロ自身も決して裕福な家庭に育ったわけではなく、「板を買うお金もない程だったけど、父が魚を売って得たお金で大会に出た」と語っている。
このトレーニング施設では、サーフィンのレッスンのほか、英語などの外国語を習う教育プログラムや、環境問題に関することなど、様々な方法でローカルコミュニティを助けていきたいとしている。
子供達の未来を切り拓くサポートをするための熱意が「Instituto Italo Ferreira」に注がれているのだ。
(空海)