「五輪のために他の誰よりも準備してきた」サーフィン日本代表 五十嵐カノア、五輪開幕直前会見

東京オリンピックの開幕まであと1週間を切り、先日の波乗りジャパンメンバーの記者会見に続き、日本入りした五輪サーフィン日本代表の五十嵐カノアがオンライン記者会見に出席した。

会見では、オリンピックの金メダルにこだわる理由や、寝れない夜もあったほどのプレッシャーとの向き合い方、現在のコンディション等について語った。

■開幕直前の思い

「ここまで準備している選手はいない」

「2年前にCTランキングでオリンピックに出られることが決まって、今までプレッシャーも含めて楽しみな気持ちを高めてきました。サーフィンがオリンピックになった時から、オリンピックに出場することが夢だったので、あと1週間で始まるのが楽しみです。」

「五輪に出場するという最初の目標をクリアしてから、その次に大変だったのは、東京まで行って怪我とか体の調子とかしたらどうしようということでした。オリンピックの1週間前に身体が調子よくて、自信を持っていることが目標だったので、今、これまでで一番体もサーフィンも調子がいいので、本番が近づいてきて反対にプレッシャーが和らいできました。

「スポーツ選手は怪我が多いから、大会前に100%調子がいいということはめったにないので、今週は怪我しないようにとにかくリラックスしてサーフィンします。」

この4年くらい、毎朝起きてから、朝ごはん食べるより携帯をいじるより前に、“今日は何をやればオリンピックに近づけるか”を考えていた。サーフィン、トレーニング、食事だけでなく、その考え方も含めて全てがオリンピックのための準備だった。ここまでやっている選手は誰もいないと思うし、これ以上できることはなかったと思う。ここまで準備を出来たということが自信になっていて、もう早く始まって欲しいという気持ち。」

■五輪で勝つための戦略

「普段のルーティンを崩さない」
「ヒート表はギリギリまで見ない」

「カリフォルニアの波も結構千葉に似ているし、千葉の波に似ているような波を探して練習しました。自分は日本の波にに合っているから、いつも通りの自分のサーフィンをしようと思っています。」

「オリンピックが大切な大会という気持ちもあるけど、普段のCTの時のルーティーンを崩さないようにしました。出発前日、19本の板をパッキングしていたけど、いつもと同じルーティンにするために、板は12本にして、同じバッグ、同じ洋服を揃えました。特別な大会と考えず、普段+1つの大会があるだけだと考えるようようにしました。」

「試合に持っていく板の本数は色々試したけど、2年前くらいに12本に落ち着きました。6本は絶対使う板、3本は試す板、3本は板が折れた時のバックアップ用。今回は長さは5”9〜5”11で幅はほぼ同じで、素材はエポキシやPUなどあります。日本の波で折れることはあまりないから、今回はバックアップはなく、8本は乗ったことある板、残りは新しい板です。」

ヒート表はギリギリまで見ない。誰と戦おうが関係ないので自分に集中する。金メダル獲りたかったら相手を気にすることにエネルギーを使うより、自分にエネルギーを使いたい。1本ずつ1日ずつ集中することが今のゴール、100%のサーフィンを見せられれば絶対金が獲れるのでそこに集中しています。」

「普段の体重は80キロくらいだけど、今回は日本の波でスピードが出るように77キロまで体重を減らしました。」

■プレッシャーとの向き合い方

「オリンピック出場が決まる前は寝れない日もあった。」
「大切にしていることだからこそプレッシャーがかかる。」

「3~4年前からオリンピックの準備をしていて、毎日のようにプレッシャーを感じていた。それで反対に強くなれたのでプレッシャーに慣れて今はいい感じです。」

「プレッシャーは自分にとって、いい日もあるし、ネガティブな時もある。自分に自信が無い時が一番辛くて、オリンピック出場が決まる前は寝れない日もあった。ここまできてCTでいい結果が出せなくて、オリンピックにいけなかったらどうしようと思って。日本代表として皆のためにいいパフォーマンスみせたい、金メダル獲りたいと考えすぎてました。オリンピックの金メダルはスポーツ選手にとってピークなので、その金メダルを獲るチャンスがあると思うだけでも寝れなくなりました。」

「何故こんなにプレッシャーを感じているのかって考えたこともあります。でも大切にしていることだからこそプレッシャーがかかる。それはサーフィンがオリンピック新競技であり、毎年ある大会でもないので、この大切さがプレッシャーになって力になっている。そのプレッシャーが面白くて、それが勝負だと思うんです。」

「2019年にバリで勝った時、プレッシャーが多くかかった時の方が笑った思い出が多いと気付いて、プレッシャーを感じることはネガティブなことじゃないと捉えるようになりました。普通のプロフェッショナルアスリートからトップアスリートに成長したなと思います。」

■普段のCTとオリンピックの違い

「オリンピックは他競技の選手もみんな一緒に金メダルを獲りにいく。」
「自分は日本のために金メダルは1個しか獲れないけどその1個を獲りたい。」

「普段のCTとオリンピックの違いはイベントの大きさ。空港に降り立った時もオリンピックムードを感じて、メディアのインタビューも毎日オリンピックのことを聞かれて、会場も盛り上がっている。サーファーだけじゃない世界トップのアスリートが東京に集まっていることが、普通のサーフィンの大会じゃなくて、世界で一番すごいスポーツのイベントだと感じる。」

オリンピックは他の競技の選手もみんな一緒になって金メダルを獲りにいく。そんなのオリンピックだけ。サーフィンはチームスポーツじゃないから、自分勝手で自分のことしか考えてこなかった。日本代表になってISAでチーム皆で金メダル獲りにいって。今度はオリンピックでバスケットの八村選手とか、スケートの堀米選手とかも一緒に、日本のためにみんなで頑張ろうというのが凄い。自分は金メダルは1個しかとれないけど、その1個を日本のために獲りたい。

■オリンピックで金メダルにこだわる理由

世界で一番凄いサーファーじゃなくて、世界で一番すごいアスリートとして知って欲しい。サーフィンに詳しくない人も五十嵐カノアを知って欲しい。世界の凄いアスリートはみんな金メダルを獲っている。ウサイン・ボルトさんやセレナ・ウィリアムスの隣に自分の名前を入れたい。オリンピックの金メダルを獲った選手は一生名前が残ります。日本のサーフィンファンだけでなく、他の競技のファンからも喜んでもらえて、知ってもらえるからオリンピックで金を獲ることは大切なんです。

■家族、無観客について

「東京のおばあちゃんや家族がビーチまで来れないのは残念だけど、近くにいるだけで力ももらえるから応援宜しくお願い致します。がんばるよ!」

「ファンがいるのは力が出るので無観客になったのは残念だけど、コロナ禍でもみんなが安全にサーフィンできて、コロナを増やさないことが大切。SNSでのメッセージでも力をもらえるし、100%力が出せるようにがんばります。」


いよいよ7月23日に開幕式を迎える東京オリンピック。THE SURF NEWSでは大会本番のヒート表や試合結果も配信予定。波のコンディション次第だが、サーフィン競技の期間は7月25日に開始され、波乗りジャパン全メンバーが初日にラウンド1を実施する予定だ。詳しくは以下特設サイトにて情報を随時アップデート予定!

(THE SURF NEWS編集部)

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