東京オリンピックが終わり、世界のトップサーファーは次の目的地であるメキシコに向かい、8月10日〜19日にCT第7戦『コロナ メキシコ オープン』が開催される。
メンズのカレントリーダーはガブリエル・メディナ。
すでに終了している6戦中、5回もファイナルに進み、その内の2回で優勝と圧倒的な成績ですでにワールドタイトルを決める「WSLファイナル」の進出も決まっている。
そのガブリエルを東京オリンピックサーフィン競技でヒート終了間際に倒したのは、ご存知の通り、五十嵐カノアだ。
WSLは「ガブリエルをブザービーターで倒すことができるなら誰でも倒せるとCTのラスト2戦に向けて五十嵐カノアの頭の中にはそんな思いがあるに違いない」と推測、今がワールドタイトルを獲得するベストチャンスという記事を出した。
五十嵐一家にとって今回の銀メダル獲得は子供のプロサーフィンの夢を追いかけるために日本からカリフォルニアへ引っ越したことから始まった20年余りの努力が現時点の頂点に達した瞬間だった。
カノア自身もガブリエルとのSFが「これまでの自分のキャリアの中で最も特別なヒートの一つ。世界最高のサーファーを相手に最後の8分間で9点を取らないとメダルが取れないという状況で、プレッシャーが重くのしかかっていた。自分にとっては大事な瞬間だと思っていたよ。波が来てくれて本当に感謝している」と話している。
カノアにとって栄光への道の途中には多くの壁があった。
ツアー当初は苦労した少年がCTイベントで優勝。そして、今度はオリンピックのメダリストになったのだ。
「WSLファイナル」出場のチャンス
残り2戦の時点でCTランキング6位のカノアはトップ5で争われる「WSLファイナル」出場のチャンスが十分にあるが、オリンピックとは違う波での勝負に再調整して集中しなければいけない。
カリフォルニアで育ったカノアにとって「WSLファイナル」の会場であるローワー・トラッセルズは熟知している波であり、「WSLファイナル」に出場できればワールドタイトル獲得も具体的に見えてくる。
メキシコ戦に入る前、現在CTランキング5位のグリフィン・コラピントとカノアのポイント差は僅か690。
更に下からカノアを脅かす存在だった7位のジョーディ・スミス、10位のジョン・ジョン・フローレンスが欠場とトップ5入りの要素は揃っている。
また、会場の「Barra de la Cruz」は長いライトハンダーで、カノアが優勝したバリ島のクラマスに似ており、2018年と2019年のJ-Bayでも好成績を残している彼のスタイルに合う波と言える。
「WSLファイナル」に残るにはメキシコでの大きな結果が求められる。
もし、シーズン最後のタヒチ戦までもつれ込むのであれば、それは運にも左右されてしまうからだ。
今一度、オリンピックでのカノアとガブリエルの対戦を振り返ってみる。
現在のサーフィン界で最も強い選手である彼は自分が何をするべきか正確に理解して実行した。
他の選手であれば崩れてしまうような場面でもカノアは諦めずに冷静に波を選び、最高の演技を行なったのだ。
これこそがカノアの強みであり、ワールドタイトル獲得に繋がる重要な要素である。
すでにスタートした最初のヒート(Seeding Round)では、ケリー・スレーターのバレル、コロへ・アンディーノのエアリアルを前に敗退して敗者復活戦行き(Elimination Round)を強いられているが、次は取りこぼしなく、Round of 32行きを決めてくるだろう。
もし、Round of 32以降のラウンドでガブリエルやイタロなどの強敵と対戦することがあっても、志田下でのあの瞬間を思い出し、冷静に対処するだろう。
カノアはWSLのこの記事に対して以下のツイートをしている。
「私のキャリアの中で、今年が世界タイトルを獲得する最高のチャンスだとは思わない。しかし、ツアーに参加して以来、最高のチャンスだと思う。」
(空海)
参考記事:Kanoa Igarashi Knows His Best Chance At A World Title Is Right Now|World Surf League