13日の金曜日と言えば、欧米の多くの国で不吉とされている日だが、2021年8月の13日の金曜日はタヒチにいたサーファーにとって一生忘れられないような特別な一日になった。
本来なら2021年のCT最終戦のために世界中からトップサーファーが集まっていたこの時期だが、パンデミックでキャンセルになったためにローカルやネイザン・フローレンスなどの限られたビッグウェーバーによるチョープーでのセッションになった。
カウリ・ヴァーストの恐怖体験
今回のチョープーに入った巨大なスウェルはコードレッドと呼ばれて歴史に残るセッションになった2011年8月27日を上回るような大きなだった。
それは海岸線の家を壊し、ボートを沈没させてしまうような威力があった。
現在のタヒチで若手ナンバーワンと言われているカウリ・ヴァーストは見学していたボートが一斉に逃げ出すような大きなセットでバレルに入ったものの、最後に分厚いリップに飲み込まれてしまう…。
その時の恐怖体験を以下のように語っている。
「3時間もあの波を待ったんだ。やっと自分の番が来た時は準備万端だった。今まで乗った波の中で最も複雑なラインだったよ。あの’獣’にテイクオフしている間、全てのボートが命がけで逃げていくのが見えた。バレルに入っている時は背後にエネルギーを感じ、自分のラインを信じてボードから落ちないようにと思っていたのさ。出口を見つけたと思ったけど、まだバレルは終わっていなく、そのままワイプアウトしてしまったんだ」
「海中では最初死を覚悟したね。海底に向かって一気に沈み、波が暗礁を砕いていたんだ。信じられないだろうけど、岩の破片を手で掴んだよ。あの瞬間、自分の命のためにパドルを始めるべきだと思ったんだ」
「2本目の15ftの波を喰らうまでの間、数秒間だけ息ができる状態だった。それが人生最大のダックダイブ(ドルフィンスルー)をして無事にチャンネルを抜けることができたんだ。過去最大の波とは思わないけど、今までで一番大きな波だったのは確かさ」
マタヒ・ドローレが史上最大のチョープに乗った
地獄を見たカウリに対して現在のチョープの最高のチューブライダーと呼ばれているマタヒ・ドローレはチョープの史上最大の波を最後まで完璧なラインでメイク。
マタヒをサポートした兄マノアのジェットスキーでの牽引の技術も完璧だった。
「9時間も待って人生で最高の波を手に入れた。マノアという最高のパートナーがいたことも幸運だったよ。彼はベストサーファーであり、ベストドライバーさ」
ちなみにマタヒはフォイルボードでチョープーの波にトライしており、あの浮遊感のままバレルに入ることにも成功している。
13日の金曜日のセッションにはマタヒ、カウリの他、ヴァヒネ・フィエロ、ヘイアリイ・ウィリアムズのローカルを始め、ジャスティン・デュポン、ネイザン・フローレンス、ルーカス・チアンカ、カム・リチャーズ、ラムジ・バークヒアムも国境を超えて参加していた。
ちなみにタヒチのチョープーは2024年パリオリンピックのサーフィン競技の会場に決まっている。
時期的にも今回と重なるため、世界中の人が驚くような波でオリンピックが開催されるかもしれない。
(空海)
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