8月11日、青森県八戸市の八戸港内で貨物船クリムゾン・ポラリスが座礁し、船体が二つに割れて海に重油が流出した。第2管区海上保安本部によれば、これまでに最大約280トン超の重油が流出し、八戸市~六ケ所村の海岸には点在する程度に油が漂着しているものの、「防除作業も進んでおり環境に影響するほどではない」という。
この事故を受け、三沢市は市内の「三沢ビードルビーチ」を遊泳禁止としたが、地元サーファー達の間では特にサーフィン禁止や自粛などの動きは出ていない模様だ。
座礁事故の経過と対応
8月11日、木材チップを積みタイから八戸港に向かっていたパナマ船籍の貨物船「クリムゾン・ポラリス」が八戸港内で座礁した。
8月12日朝、船体が二つに割れ船体は八戸港の北4km付近に漂流。燃料として積んでいた重油が流出した。
同日夕方頃には、三沢漁港北側から六ケ所村にかけ15km以上の沿岸に油が漂着。8月31日取材時点までには、八戸市、三沢市、おいらせ町、六ケ所村の海岸で漂着油が確認された。
地元漁業者は一時定置網漁を中止し、8月16日には三沢市が「三沢ビードルビーチ」での遊泳を当面禁止とした。
漂着した油や木材チップは、海上災害防止センターや、同船をチャーターしていた日本郵船の社員らが回収を行い、海上の重油については海上保安庁の巡視船などが浮遊油を見つけ次第拡散させて希釈している。
8月27日には分断された船体の船首部が八戸港に係留され、9月中旬にかけて残存している重油約1200トンの抜き取り作業が進行中だ。
海上に残っている船尾部は、海上保安庁などが解体に向けて調査を進めている。
9月9日からは、八戸市のセメント会社「八戸セメント」が、重油が付着した海岸漂着物を受け入れる。
地元サーファーや関係者の声
■地元サーファー(八戸市)
「特に八戸周辺では、地元のサーファーも気にせず海に入っています。三沢では一部遊泳禁止となったビーチもありましたが、サーフィン禁止や自粛など動きはありません。」
■地元サーファー(東通村)
「この辺りには海流の関係などで普段からゴミが溜まる場所ありますが、重油を見たり臭いを感じたりしたことはありません。地元の漁師も、木材チップは見たが重油はなかったと言っていました。東通村ではそんなに被害は出ていないと思っていて、皆自己責任で普通に海に入っています。」
■地元漁業組合関係者
「結果的には三沢付近では大きな被害はなかったのですが、事故直後は海岸から油の臭いがすると大きな問題になりました。12日16時には油の漂着が確認され、13日まで2日間程続きました。ただ、ちょうど13日からお盆休みに入り、お盆明けの17日には定置網に油は着いていませんでした。
魚も問題なく取引でき、特に値段も下がらず例年通りです。県内の一部大型スーパーでは、近海で水揚げされた水産物の仕入れは控えるようにとの通達もあったようですが、他が通常通り取引しているのをみて徐々に再開しています。三沢では殆ど漁業被害はありませんでしたが、八戸の一部では今も操業を停止しているところもあり、どのように再開するか協議中のようです。」
■三沢市役所
「8/12に現場で確認したがかなり重油の匂いがしたため、三沢ビードルビーチを8/16に閉鎖しました。その際重油自体の漂着は確認されなかったものの、ペットボトルなどのごみに油がついていました。当初の遊泳期間(9/5)まで閉鎖の状態が続きました。
市ではその他に小川原湖海水浴場を管轄していますが、そちらは影響なく普通に営業していました。先月はサーファーの方からも電話で問い合わせはありましたが、(問い合わせ時点では)ビードルビーチは再開未定ということを伝えて、あとは各自の判断に任せていました。」
■第二管区海上保安部
「八戸~六ケ所村まで点在する程度に油が漂着していますが、防除作業も進んでいて環境に影響するほどではありません。現在沖にある船尾側から多少流出油がする時もあるが、流出がない時もあります。油を発見次第、巡視船で攪拌するなどしていて自然に戻している状況です。過去のタンカー事故と比べてもそれほど重大ではなく、今後も特に大量の油が漂着するなどの見込みはありませんが、漂着油の回収作業をしているエリアがあるのは事実なので、海に入るかどうかは各自の判断でしていただければと思います。」
現在、八戸港に係留されている船首部の残存油の抜き取り作業が進行中だ。海上の船尾部に残った油の回収目途は立っていないようだが、周囲には防漏ネットが設置されており、「今後大量の油が漏れてくる見込みはない」との見解を第二管区は示している。
沿岸部でのサーフィンについては大方平常通り行っているようだが、現地でサーフィンをする場合には、地元のサーフショップや自治体等で最新情報の収集を。
(THE SURF NEWS編集部)