サーフボードを製造する上で欠かす事のできない主な材料となるのが、フォームブランクスに始まり、フォームをラミネートするためのグラスファイバー(ガラス繊維)とレジン(樹脂)。
上記の3つの内、1つでも欠けると製造工程が滞る事になり、私の記憶にある中では過去にフォームブランクスが2005年に枯渇した事がありました。
理由としては当時のフォーム業界において、アメリカ国内のシェアが約9割、世界シェアが6割あったクラークフォームが突如として閉鎖したためです(原因については明かされず)。
当時としては衝撃的なニュースでしたが、結果的に見ればPUフォーム一辺倒だったフォーム業界においてEPSフォームなど多様性が広がる結果となりましたが。
今回問題となっているのは、アメリカにおけるグラスファイバー不足及び値段の高騰であり、問題の引き金となったのはアメリカと中国による政治的な駆け引きとBloombergが報じました。
以前のアメリカはグラスファイバーの大半を中国からの安価な輸入品に頼っていました。
そんな中、2018年にトランプ政権であったアメリカが中国への経済制裁として、輸入グラスファイバーやレジンに対する関税を25%引き上げることに。
当然、中国も黙っている事はなく報復措置に動き、グラスファイバー製造者たちは商品の供給を輸出ではなく国内市場へと転換し、輸出価格を吊り上げる政策を取りました。
国内市場における供給としては、風力発電向けの風車の羽根を製造するためのグラスファイバー使用などにプライオリティをシフトさせたとのこと。
そのような政治の駆け引きに加え、新型コロナウイルスのパンデミックにより世界的にグラスファイバーを使ったプールやボート製造などといった娯楽向けの需要が減少し、コロナ倒産する中国の工場もあり、グラスファイバーの全体的な量自体が減少。
このような事態に見舞われ、南カリフォルニアを拠点とするサーフボードブランドAIPA SURFのデューク・アイパは「大惨事」と口にするほど深刻な問題となっているそうです。
量自体が減ればグラスファイバー確保が容易ではない事から、サーフボードオーダーの納期が延びることにも直結し、Surf Hardware Internationalのリージョナルマネージャーは「以前は最短で6週間だった納期が6カ月になった」とBloombergに伝えています。
中国からの輸入品に期待できないのならば、打開策としては東南アジアで関税の高くない国から輸入すれば良いのですが、どうしても従来の値段よりも跳ね上がるそうです。
概算としてデューク・アイパによると「これまで750ドルだったサーフボードが1,000ドル近くになると思う」とのこと。
果たして、アメリカ国内におけるサーフボード価格が大幅な値上げに動くのか、はたまた知恵と工夫で現状維持する事になるのか今後の動きに注目です。
参照記事:Surfers, swimmers, boaters run into summer-disrupting shortage|Bloomberg