海でのサーフィンでは全く同じ波は存在しないと言うことで、「波との出会いは一期一会」と呼ばれるロマンティックなセリフがあるのですが、裏を返せば反復練習が不可能なスポーツでした。
その概念を壊すことになったのが、全く同一の波を発生させるウェイブプールで、これまで不可能であった反復練習が可能になれば上達のスピードが極端に上がります。
となれば、レジャー用途としてだけではなく、サーフトレーニングに特化した施設の誕生は必然的であり、そんな夢の環境を実現するべくムーブメントが動き始めました。
世界初、ウェイブプールのハイパフォーマンスセンターが設立
そんなムーブメントを引き起こすのは、サーフパーク開発業者の「Aventuur(アヴェンター)」社とサーフスクール「Micro Surf Academy(MSA/マイクロ・サーフ・アカデミー)」。
両社がパートナーとして手を組み、世界初となるウェイブプールのハイパフォーマンスセンターを設立する運びとなります。
具体的な建設地となるのは、オーストラリアの西オーストラリア州都パースの中心地から南におよそ15キロほど離れたコックバーン。
同ハイパフォーマンスセンターのウェイブプールに使用される造波装置は、ウェイブガーデン社のザ・コーヴとのことです。
今回の提携について、MSAを主宰する元CTサーファーのマイクロこと、グレン・ホールは以下の声明を寄せています。
今のサーフィンはスポーツとして新たなブームの最中にあると言えるね。
2021年だけでも、サーフィンが東京五輪でオリンピックデビューしたり、WSLのツアーフォーマットでCTが変わったりCSが加わったりしたし。
ここ10年ならば、世界中でウェイブプールが建設されているし、サーフィンを専門にしたコーチングやトレーニングが世界的にも当たり前になってきてるよね。
だからこそ、ザ・コーヴを使ったウェイブプールを活用してコーチングという今回の提携に関しては二つ返事で引き受けたんだ。
ウェイブプールならば、海では1か月かかるトレーニングが1日で行えるんだから。
もちろん海に取って代わる存在にはならないけど、バレルとエアーの技術はとんでもないスピードで上げる事ができるよ。
具体的にどのようなコーチング内容となるのかは明らかにされていません。
なので推測ではありますが、コントロールされた環境下ということであらゆる角度からの撮影が可能になるので、体勢や加重配分といった細かな点を確認できます。
そしてサーファーがライディング後に、プールに設置したモニターで本人にライディングを見せながらコーチが問題点を指摘し、修正していくといった事も可能となります。
あくまでも上記はこのようなコーチングも可能という事ですが、こんなコーチングを受ければ従来では考えられないスピードで上達するのは想像に難くないですね。
さて、ウェイブプールの当初の目的は海のない内陸エリアでもサーフィンを楽しめる環境を提供するといったレジャーテイストが強かったです。
しかし、今回の動きはスポーツテイストが前面に出ているので、経営上の採算を考えてコンペティター人口の多いサーフィン大国のオーストラリアでスタートとなったのだと思います。
海とウェイブプールでは一長一短があり、ウェイブプールだけでサーフしていたら、海でのカレント、パドルパワー、ポジショニングと言った面には強くなれません。
そのため、ベストなのはピンポイントでのウェイブプール活用であり、近い将来、サーファーがウェイブプールで短期合宿など当たり前の時代になるのではないかと思うと今後が楽しみになります。
Aventuurとは
アヴェンダー社は2019年に創業したアドベンチャー&レジャー事業にフォーカスした投資プラットフォームで、現時点でフォーカスしているのはサーフパークの開発運営事業。
オーストラリア(アーバンサーフが建設したメルボルンと建設予定のシドニーの都市部を除く)、ニュージーランド、シンガポール、フィジーにおいてザ・コーヴ搭載ウェイブプール建設の独占ライセンス契約をウェイブガーデン社と結んでいます。
Micro Surf Academyとは
「Micro Surf Academy」は、近年で最も注目を集めたサーフコーチの一人、マイクロこと、グレン・ホールが主宰を務めるサーフスクール。
CT選手やCT入りを目指す選手にコーチングを行っていて、2015年にCTを引退した翌年、毎年ツアー残留が危うかったマット・ウィルキンソンをCTランク5位へ、タイラー・ライトをワールドチャンピオンに導いた功績などが知られています。
そんなマイクロ率いるサーフアカデミーということで、彼のノウハウを詰め込んだスタッフによりトップレベルのサーファー育成が期待されるアカデミーです。