5月11日、静岡県牧之原市は、東京オリンピック金メダリストのカリッサ・ムーアと市内の相良高校の生徒とのWeb交流会を開催した。
牧之原市は、東京五輪におけるサーフィンアメリカ代表のホストタウンとして事前合宿を受け入れ、その後の五輪本番でカリッサが見事金メダルを獲得。オリンピック後も、米国サーフィンチームとの交流を深めるため、今年4月にはUSA Surfingの代表らとも交流するなど熱心な取り組みを続けている。
この日の交流会では、五輪の金メダリストであり、5度のワールドチャンピオンであるカリッサ・ムーアと父のクリス、市内の相良高校でこの春新設されたサーフィンサークルとグローバルチャレンジサークルの生徒が参加した。
中学、高校時代にハワイで日本語を学んでいたカリッサは、事前キャンプに続き今回も日本語で挨拶。
「相良高校のサーフィンチームのみなさんこんにちは。私はカリッサムーアです。ホノルルハワイで生まれ育ちました。5歳からお父さんにサーフィンを教えて貰い、東京オリンピックでゴールドメダルをゲットしました。オリンピック大会の前には牧之原でプレキャンプをしました。その時のおもてなしが私に牧之原パワーをくれました。今度はみなさんにカリッサパワーをあげます。どうぞよろしくお願いします。」
―カリッサ・ムーア
また「アムロツヅキは私の友達です。そしてカノアイガラシが大好きです。」とも紹介した。
参加した高校生たちはこの日のために、英語でのスピーチができるよう猛特訓したと言い、英語で自己紹介やカリッサへの質問を行った。高校生たちが英語で行った質問と、カリッサのアンサーを抜粋して紹介。
毎日どんなトレーニングをしているの?
(カリッサ)波があるかないかで変わりますが、波のある時はサーフィンをします。サーフィン以上にサーフィンの練習になるものはないからです。でも波がなければ、日記を書いて頭を整理したり、オンラインでトレーニングをしたり、あとは家事をしたり、NPOの取り組みをしたりします。
サーフィン前にルーティーンはありますか?
(カリッサ)10~15分前にはストレッチをして、パドルアウトの30分前は音楽を聴いたり、コーチと戦略について話して、心を平穏にします。普段の練習でも必ず海に入る前に5分使って、自分の中で目標を明確にします。
牧之原には次いつ来てくれますか?その時バックサイドやフロントサイドのターンを一緒に練習してくれませんか?
(カリッサ)本当は近々行くつもりだったけど、残念ながら難しくなってしまったので、9月のシーズン終了後に行きたいと思っています。バックサイドもフロントサイドも、全部練習しましょう!
ターン上達のためにアドバイスをください。
(カリッサ)一番大事なのは情熱をもつこと。他の人にアドバイスをもらうこと。良いゴールを持つこと。一生懸命練習すること。
どこの国の波が好きですか?
(カリッサ)ハワイにもいい波はありますが、その他にCTの会場だと南アフリカのJベイがお気に入りです。今年そこに行くのを本当に楽しみにしています。
オリンピックアスリートになるまでにどんなことをしてきましたか?
(カリッサ)オリンピック選手になるために本当に沢山のことをしてきたけど、大きな質問で何て答えたらいいか分からないわ。
(クリス)波の上でどんな動きをするかの技術面について、子どもの時から何年もやってきました。今でもやっています。それから、ホームでやっているときと同じ様に、世界中の波でその動きができるようにしました。そして世界中の波を理解するように努めました。それがカリッサが成功するために重要な事でした。
東京オリンピックでゴールドメダルを獲った時どんな気持ちでしたか?
(カリッサ)全てが上手くいったなんてちょっと信じられない気持ちでした。2年前にゴールドメダルをとるという目標を立てたけど、でも実際にそれを成し遂げるには本当に沢山のことをやらなければならないことも分かっていました。なぜなら、サーファーは自分でコントロールできない母なる自然を相手に戦わなきゃいけないからです。どうなるかわからないことが沢山あったのです。
決勝終了のホーンが鳴って、金メダリストのアナウンスがされた時、「どうしよう、本当に夢が叶っちゃった!」と嬉しかったです。オリンピックの会場に家族がいてくれたらもっとよかったけど、ホームでみんな応援してくれているのが分かっていたので、すごく嬉しかったです。
ハワイの代表として、カルチャー、ライフスタイル、そしてサーフィンというスポーツを代表してその場に立てたことがとても誇りでした。
プロサーファーとして12年活動していますが、その間サーフィン界はとても進化しましたし、男女の平等化も進みました。サーフィンが世界レベルになったことに感謝していて、その最高峰のオリンピックに参加出来たのは本当に素晴らしい出来事でした。
ファイナルデーの前、誰かと話しましたか?
(カリッサ)ファイナルデーの前日、お父さんと旦那さんに電話しました。オリンピックではいつものメンバーではなく、ナショナルチームとして参加していたので、普段は一緒のチームにいる人達に連絡したのです。そのおかげで、安心して海のなかに入れて、安心して、力になりました。
お父さんには「台風で波が荒れてストレスフルだろうけど、冷静に、柔軟に、ポジティブに、そして一生懸命対応するように」とアドバイスをもらったことを覚えています。ファイナルヒートで、15分もの間波につかまってしまい、ただただパドルアウトしていたんです。その時父のアドバイスを思い出して、信じるしかないと思いました。そしてその通りになったのです。
旦那さんとは電話越しに2人のダンスパーティーをしたんですが、それも力になりました(笑)
(クリス)カリッサと電話したとき、彼女と同じような気持ちでした。とても大きなチャンスが目の前にあったけど、どうなるかわからないことも沢山あったからです。少し緊張もしていたけど、ただただ彼女のこれまでの道のりと成長を楽しみました、遠くからでしたが。
カリッサから高校生へのメッセージ
交流会の最後に、カリッサはサーフィンの素晴らしさを高校生たちに伝えようと熱いメッセージを贈った。
「サーフィンが出来るようになり、海や水とうまく付き合えるようになることは素晴らしいことです。でもそれ以上に皆さんにお伝えしたいのは、私が海からの学びを愛しているということ。海は人生の中で”Go With the Flow(流れに身を任せる)”ということや、柔軟であること、与えること、愛することを教えてくれました。ゴールドメダルは嬉しかったけどオリンピックまでの旅が一番大事。サーフィンを通じて世界中の様々な人と絆ができたのです。オリンピックで金メダルを獲れたのは、これまでの自分の努力だけでなく、今まで関わってくれた全ての人によって成し遂げられたのです。サーフィンはただ波に乗るだけではなく、もっと素晴らしいことがあります。皆さんとその素晴らしさをシェアしたいと思います。」
「サーフィンクラブの皆さん。一生懸命練習して、今後試合に出るようになるのか、フリーサーファーになるのかわからないけど、どちらにしても海で波に乗れるようになるというのは素晴らしいことなので、楽しんでください。」
(THE SURF NEWS編集部)