自力で波に乗るパドルイン、そしてジェットスキーのパワーを借りて波に乗るトウインと主に2種類に分けられるビッグウェイブサーフィン。
いずれも死のリスクを伴う危険なチャレンジではあるのですが、どちらの方がより危険かと言うとパドルインではないかと思います。
理由としては、トウインであれば必ずコンビで行うので、最低でも1人は常に気にかけてくれる存在がいるためです。
一方のパドルインについては海に入る全員が事故対策としてのジェットスキーアシストを雇っているわけではないので、以前にハワイのマウイ島ジョーズで問題になったことがあります。
「何かあった時にヘルプしてもらいたいならそれなりの対価が必要」と訴えるローカルに対し、「ヘルプは必要ない」と金銭の支払いを拒否するビジターという構図。
ですが、実際に何か起こりそうになった時にジェットスキードライバーは見捨てることができずに救助に向かうので問題になったというわけです。
一方のトウインでは、基本的にビッグウェイブサーファー同士がコンビを組んで目を光らせていてセキュリティレベルは高く、昨シーズンまで世界最大サイズの波がブレイクするポルトガルのナザレでも死亡事故は1件もありませんでした。
トウインサーフィンの安全面について
ビッグウェイブサーフィンにおいて、サーファーが命を落とす原因は溺れること。
溺死を避けるため、サーファーは心肺機能強化といったトレーニングに取り組むことは当然ですが、ジェットスキーのテクニックも同時に学ぶことになります。
前述した通り、大半のビッグウェイブサーファーはジェットスキードライバーも兼ねる事になるためです。
実際に学ぶことになるテーマは大きく分けて2つで、ワイプアウトしたサーファーの捜索と救助のテクニック。
特に一刻も早くサーファーをジェットスキーに乗せて避難することが大事故を避ける行動に繋がるので、次なるセットが迫りくる中で波のブレイクゾーンへと向かうこともしばしば。
また、救助はジェットスキードライバーの視覚のみに頼るのではなく、ラインナップを見渡せるエリアで待機したレスキューメンバーからトランシーバーで情報をキャッチしたりと万全な状況が整っています。
これほどまでに徹底した対策を行ってきたからこそ、以前にナザレで死亡事故が起きなかったのでしょう。
実際の救助の映像は下記からチェックして見て下さい。
ナザレで初となるサーフィン中の死亡事故
これまでにナザレではトップビッグウェイブサーファーであっても、生死の境をさまようほど危険な状態に陥る事故はありました。
にもかかわらず、世界最大サイズの波がブレイクする舞台で死亡事故が起きなかったのは、単なるラッキーではなく万全の準備があった上でのことでしょう。
そんな中、1月5日に残念ながらマウイ島ジョーズでのパドルインサーフィンのパイオニアの一人であるブラジリアンのマルシオ・フレイリー(47歳)が他界する事故が起きました。
マルシオを救おうとジェットスキーでビーチまで連れて行ったのはチャンボこと、ルーカス・チアンカで以下のSNS投稿をしています。
現在のビッグウェイブシーンでは、サーファーはインフレータブルベストを着用し、バックアップとして万全なジェットスキーアシストが控えています。
なのですが、メディア情報によるとマルシオはインフレータブルベストを着用していなかったとのこと。
サーファーによってインフレータブルベストへの見方は異なり、保険を掛けないとチャージできないならビッグウェイブサーフィンではないという考え方のサーファーもいます。
マルシオがどのような考えで着用していなかったのかは不明であり、着用の有無が死亡事故に直結したのかも分かりませんが、とにかく着用はしていなかったそうです。
また、4年振りのビッグウェイブサーフィンだったという事実も話題として上がっていました。
マルシオの事故は非常に残念ではありますが、これまで死亡事故が発生していなかったという事実について逆に驚かされたニュースであったとも言えます。
参照記事「How jet skis drivers search and rescue big wave surfers」
(World Surf Movies)