アメリカでは巨大メディア企業によるサーフィンメディアの買収が相次いでいる。
2020年冬号の発行を最後に60年の歴史に幕を閉じた『SURFER』は、2022年12月13日に複数のメディアグループ企業を所有するThe Arena Groupに買収されると発表された。その翌週21日には、オンラインメディア『The Inertia』も複数のライフスタイルメディアを傘下に持つAllgear Digitalに買収されることが明かされた。
デジタルで再開した『SURFER』
1960年、故ジョン・セバーソンによって世界初のサーフィン専門誌として創立された『SURFER』。“The Bible of the Sport（サーフィンの聖書）”として60年もの間、世界中のサーファーたちの間で名を馳せたが、長らく続く雑誌不況に加えてコロナ禍の煽りを受け2020年10月に廃刊。当時のスタッフ全員が解雇された。
パンデミックがSURFERの経営に影響を与えたため、雑誌最終号のリリース以降、スタッフは無期限に解雇され、すべてのコンテンツ制作が一時停止されました。いつかSURFERが何らかの形で戻ってくることを願っていますが、それまでの間は、最終号のこの特集をお楽しみください。
SURFER最終号 Volume 61, Number 3に掲載されたコメント
その後もWebサイトは更新されていたが、2022年12月13日、複数のメディアグループ企業を傘下に持つThe Arena Groupは、『SURFER』の元親会社であるaccelerator360から『SURFER』や『Men’s Journal』を含む計8つのメディアブランドを 合計2,850 万ドル（約37億円）で買収することを発表。
The Arena GroupのCEOロス・レヴィンソンはこの発表にあたり、「accelerator360傘下のアドベンチャースポーツブランドはスキー、サーフ、サイクリング、スケートボードの熱狂的な愛好家たちによって、長きに渡り権威を持ってきました。これらのブランドと当社の既存視聴者は自然な相乗効果があり、統合・配信・プレイブックを通じて、価値、成長、収益性の向上を推進できます。」とコメントしている。
リニューアルされたWebサイトではほぼ毎日ニュースが更新されているが、「Magazine」のメニューは消えており、時勢も考えると雑誌の再開は難しいのかもしれない。
元編集長のトッド・プロダノビッチは、THE SURF NEWSの取材に対し、「2020年の廃刊以降SURFERには関わっておらず今回の買収に関する情報も一切持っていない」と回答した。
現在同社はスタッフの採用を開始した模様で、現在は時給$25（約3200円）でライターの募集がある。
『The Inertia』も買収
Stab Magazineに並び、海外オンラインサーフィンニュースの二大巨頭である『The Inertia』。かつて『SURFER』のデジタル担当だったザック・ウェイズバーグが2010年に始めたこのオンラインメディアは、ケリー・スレーターやロブ・マチャドなどの著名人が記事を寄稿することで有名になり、創業後わずか数年で急成長を遂げた。
創業から12年後となる2022年12月21日、アウトドアやエクストリームスポーツ系のメディアを傘下に持つAllgear Digitalは『The Inertia』の買収を発表。買収額は明かされていない。
The Inertiaの全チームが今後もAllgear Digitalの一員として存続し、創業者のザック・ウェイズバーグはゼネラルマネージャーに、主要編集者のジョー・カーベリーとアレックス・ハーローはそれぞれシニアマネージングエディターとシニアエディターとなる。
今回の買収にあたり、ザック・ウェイズバーグは、「AllGear Digitalの一員となることは、The Inertiaがその可能性を最大限に引き出すための直感的な次のステップであり、私たちの進化における新たな始まりにとても興奮しています。」とコメントしている。
Zach WeisbergのLinkedInでの投稿
国内外でサーフィンメディアが巨大メディア企業に吸収合併される例が後を絶たないが、その一方でオーストラリアの『Surfing World』と『Tracks』が個人経営になるなどの動きもある。今後サーフィンメディアがどのような方向に向かっていくのか要注目だ。
（THE SURF NEWS編集部）
