ABCニュースによると、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州北部に位置するバイロンベイで先月、リーシュコード着用義務化と着用しないサーファーに対して罰金を科すリーシュ法が提出され、4月27日に満場一致で承認された。サーフィン中はリーシュが必須であることを示す標識がビーチに掲示され、違反した場合はその場で75ドルの罰金、最高で1,100ドルの罰金が科せられる可能性がある。しかし可決されたとはいえ、犯罪の証明・法の施行は困難だとも考えられている。
大きな話題となったのは、今年2月、元プロサーファーのマット・キャシディがフリーサーフィン中、流れてきたロングボードのフィンが彼の腕を切り裂いた事故だ。幸い、周囲の迅速で的確な助けにより大量出血を防ぎ、現在はリハビリを経てサーフィンを再開しているようだが、初動が遅れていれば命を落としていた可能性もあった。今回の加害者は、着用していたリーシュが切れてしまったようだが、リーシュを着用しないサーファーは一定数おり、ボードを流した結果の事故は、バイロンベイに限らず頻発している。
今回の可決によって、マットが「サーフィンにおいて、安全が、我々が海に入るときの最優先事項であるべきだ、と人々が真剣に受け止め始めている、という正しいメッセージを発信します。それがほんのひとりの子供でも頭をヒットしないように助けるものであれば、彼らは正しいことをしたと思います。」と述べている。
どのレベルのサーファーでもボードを離してしまう可能性が少しでもある以上、リーシュの普及で防げる事故は確かにあるだろう。しかし、サーフィン中の事故にはマナー・エチケット・技量を含めた複数の要因が考えられる中、自己責任の罰則化はいかがなものかという声や、リーシュ問題以上にワンマンワンウェーブの不文律マナーを無視する傾向や、暴力的で身体的恐怖を与える事故後の立ちふるまいが非常に危険だ、と様々な意見が述べられていた。
肯定派、否定派の様々な意見例
- リーシュをしないでサーフィンする流行、私はそれを受け入れられない。誰もがリーシュを着用すべきだ。海は子供で溢れているし、ここ1ヶ月で他に似たような事故が4件あった。
- 現在の混雑したラインナップでは、レトロファンタジーへのこだわりより、他者の安全、誰かに深刻な怪我を負わせた場合どう感じるかで考えて欲しい。
- リーシュ着用はシートベルト着用のようなものなのでは。別に難しいことでもなく、当たり前のことになるのでは。
- 人々を守ろうとしていることは尊重するけれど、結局は個人の問題では。サーファーは基本反抗的で今後も変わらないと思うし、リーシュをせずパドルアウトする人は、ほとんどがボードを失ったりしないレベルのサーファーで、規則に従うかどうかは懐疑的。
- 9フィートのボードは、ミサイルみたいなもの。ちょっとでも波がサイズアップすると保持するのもむずかしくなる。規則が必要だ。
- リーシュをしていても、9フィートのボードに9フィートのリーシュを着けたら18フィートの距離があるし、その中で衝突する可能性はある。
- 我々サーファーのほとんどは自由のためにサーフィンをするので、何かを義務付けられるのは好まない。ただ、特定の状況でリーシュの着用を義務化することを、本当に検討し始めなければならない。おそらく、うねりが大きい、波が強力な特定の時期など。
- 命令よりも教育では。敬意も必要だ。
- 経験の浅いサーファーが自身のレベルを見誤らないことも必要だ。
- 過剰開発や高騰する不動産など、他の問題から関心をそらすための茶番。
- サーフィンのエチケットは、水中にいる人が増えて薄れつつある。ラインナップのルールを示す標識は設置されていても誰も読んでいないのでは。エチケットを教える示す人々も減って、波の中で攻撃性が高まっていると思う。
リーシュの着用義務化やサーファーの再教育を求める声が高まる中、簡単な答えがない難しい問題だが、改めてサーフィンにおける安全意識の向上が望まれている中で、コミュニティ全体の問題と捉えたひとつの動きと言えるだろう。
(THE SURF NEWS編集部)