2028年ロサンゼルスパラリンピックへの追加検討競技となり今後大注目のパラサーフィン。
2022年の『ISA World Para Surfing Championship』では28カ国、180名以上のアスリートが参加して日本はメダル4つ、国別8位という結果を残している。
そんな中、2023年4月22〜24日にかけて一般社団法人UNIVA主催の「第2回静波パラサーフィンフェスタ」が静波サーフスタジアムで開催された。
初日はパラサーフィン体験会、2日目と3日目は競技大会『JAPAN OPEN」が開催された。
また、駐車場を利用して飲食ブース、セルシーマーケットなどの出店ブースがあり、トークセッション、パルクール、音楽ライブが行われ、来場者3,258名と盛り上がりをみせた。
体験会
初日のパラサーフィン体験会には30名が参加。
6歳から66歳までの身体障がいのある方、視覚障がいのある方、知的障がいのある方、様々な障がいを持つ方がサーフィンに挑戦した。
着替えの介助、移動の介助、ブレイクポイントまでの誘導は湘南サーファーズコミュニティ「Naminications」による見事な運営により、波の乗る人もサポーターも一つとなり、笑顔が拡がるピースフルな時間となった。
「様々な障がいを波に適応させて波に乗るアダプティブサーフィン。板の形も乗り方も様々でまさにダイバーシティ。本来、サーフィンとはシンプルに波にのって楽しむことが目的だったはず。ロングボード、ショートボード、ミッドレングス、ボディボード、SUP、垣根を越えて波に乗って笑顔になるのはみんな同じ。サーフィンの大事な本質を再確認させていただいた。
競争相手でも、良いライディングをしたらみんなで歓声を浴びせ自分事のように盛り上がる、ピースフルなこのイベントは、世界で一番進化したサーフィンのスタイルなのかもしれない。
アメリカのレジェンドサーファーの名言に「The best surfer in the world is the guy who’s having the most fun.一番楽しんでるやつが世界で最高なサーファーだ」というものがあるが、まさにこのイベントに参加して笑顔でつながったー
人ひとりが最高のサーファーだ。
We love surfing & Keep paddling.」
Naminications代表 柴田康弘氏
JAPAN OPEN
2日目は「JAPAN OPEN」 の予選、3日目は決勝が開催された。
ワールドチャンピオンを幾度も獲得しているアダプティブパラサーフィン界の絶対王者、オーストラリアのMark Mono Steward選手も参戦。彼は1972年に足を失い、それ以降自分のサーフィンスタイルを研究し続けている62歳のレジェンドだ。
開会式ではピスモビーチのローカルでAmpサーフの設立者Dana Cummings氏(US.)による挨拶で大会がスタート。
試合はISAが定めた国際ルールに則り進められ、決勝はライト2本、レフト2本、計4本のライディングスコアの内、ベスト2スコアの合計点で争われた。
◼️KNEEL
会場が一番盛り上がりを見せたのは、オーストラリアのMark Mono Steward選手のライディング。
KNEELクラス決勝ヒート1本目のライドでチューブを決め、パーフェクト10を出した。
さらに、2本目もパーフェクトバレルで共にパーフェクト10をたたき出しトータル20ポイントを獲得。
完璧なライディングで史上初の偉業を成し遂げた。
Mono選手はインタビューで、「言葉では言い表せないほど最高だった。静波サーフスタジアムは競技大会に理想的な環境が整備されている。観客が近くにいるため、波待ち時間に友人と話すこともでき、海では経験できない素晴らしいサーフタイムだ」と語った。
◼️STAND 2
片足義足サーファーの伊藤建史郎選手。カービングからしっかりレールをいれたスタイリッシュなライディングでエクセレントスコアを獲得。
観客から歓声が上がった。
伊藤選手は、自身の障がいについてこう語った。
「膝下切断の状態でスタンドアップする壁は、消して低くはないカスタマイズして自分のスタイルを確立してきた。足が棒なので、いかに踏み込んで反発を利用できるかは大事。そのため、サーフィンする時は錆びにくいカーボン製の義足を選び、よりその柔軟性から上下運動がしやすいよう工夫してしいる。ウェットスーツも、普通のものだと浸水して義足へのダメージが大きいからオーダーメイドで着用している。自分の身体的個性に合わせたアイテム選びも重要で、それも含めてサーフィンとなる」
◼️PRONE 1
カリフォルニア出身のParker Olenick選手は、2歳の時に脳性麻連と診断された。
アダプティブプロフェッショナルツアーで世界4位にランクインしている。レールを食い込ませてロングライドし、見事ハイポイント獲得。
パワーゾーンでのバランスの取り方が評価され、ハイポイント獲得、見事優勝を果たした。
日本アダプティブサーファイン先駆者である車椅子サーファーの小林征郁選手は大会終了後、以下のように述べた。
「皆さまの多大なるご協力の元、本当に素晴らしい大会になりました。本当感謝です。海外のスター選手も参戦したこの国際大会、国内に限らず海外の選手にも火をつけたと僕は思います。1人でも多くの人に知って頂きたいを合い言葉に我々活動しています。今後も引き続き国内のアダプティブサーフィンを盛り上げつつ、海外からの発信も続けていきたいと思います」
MCはNICO&水野亜彩子
当日はJPSAなどの大会でMCとして活躍しているNICOさんと水野亜彩子さんがライブ配信の解説を務めた。
アダプティブサーフィンは、サーフィンが持つ競技性の魅力でもある「スタイル」をより引き立たせるのが特色であり、面白さでもある。
選手個々の身体機能に合わせて、キャッチザウェーブする姿から学ぶことも多い。
下肢に障がいがあるStand 3クラスの勝倉直道選手は以下のように述べた。
「足首が全く動かないので人より早くテイクオフして安定性を保つためにオーバーフローな板を選択している。回転性を良くするためにはラージのツインスタビに変えてトレーニングに励んでいる」
絶対王者の歴史的瞬間を、そして日本のパラサーフィン界をけん引する選手たちの圧巻パフォーマンスを、静波サーフスタジアムで世界に発信できたことは、日本のパラサーフィンが世界中から注目を集めるきっかけとなるだろう。
「JAPAN OPEN」配信アーカイブはこちらから視聴可能。
4/23(Sun)予選 :https://www.youtube.com/live/Nsr0Bufa1DE?feature=share
4/24(Mon)決勝 :https://www.youtube.com/live/nTfC2DgQrn4?feature=share
「第2回静波パラサーフィンフェスタ」概要
名称:静波パラサーフィンフェスタ JAPAN OPEN 2nd Adaptive Surfing Championship
日程:2023年4月22日(土)~24日(月)
主催:一般社団法人UNIVA
会場:静波サーフスタジアムPerfect SwellR(静岡県牧之原市静波2220)
来場者数:JAPAN OPEN2日間1853名(静波パラサーフィンフェスタ3日間では3,258名)
参加団体:牧之原市
JAST (Japan Adaptive Surf Team)、
Nami-nications、NSA (Nippon Surfing Association)
OnestepSELSEA、allallJAPAN、スイングビーチホテル
榛原総合病院、日本福祉車両協会、宮崎メディカルサーフチーム、
BLATworks.
後援:NSA、静岡県牧之原市、サーフスタジアムジャパン(株)
特別協力:公益財団法人星いきいき社会福祉財団
Text:静波パラサーフィンフェスタ実行委員会 松本真季