オリンピックや世界のスポーツを幅広くカバーするWebメディア「インサイド・ザ・ゲームズ」や「クルーズ業界ニュース」が報じた情報によると、来年のパリ五輪、タヒチで開催されるサーフィン競技へ参加する選手らの多くは、ポリネシアのクルーズ船「アラヌイ5」に宿泊する可能性が高いことが明らかになった。
五輪会場の要件を満たす唯一の宿泊施設
当初、陸上にオリンピック村の建設や車両の通行ができる新たな橋の建設、会場近くに立地する25年以上閉鎖されていた旧プウヌイホテルの改装が含まれた大規模プロジェクトが計画されていたが、環境破壊につながるとして、一切の新たなインフラ整備に対して地元住民は断固反対を表明。政府、オリンピック組織委員会との数ヶ月に渡る話し合いの結果、開発は最小限にとどめることに合意した。
パリ五輪の開催まで1年を切った今年8月、ホテルの改築工事が間に合わないと判断し、ポリネシアのクルーズ船「アラヌイ5」を大会期間中に停泊させることが発表された。その結果、ポイントに最も近い水上ホテル、かつパリ五輪で要求されている「競技会場から45分以内の宿泊施設」の要件を満たす唯一の宿泊施設となった。
最大254名が宿泊可能。競技中のクルーズ停泊は初
「アラヌイ5」は、2015年に就航した長さ約125メートル、7500トンの貨客船。スイートルームやデラックス ステートルームを含む、計103のキャビンに254名のゲストが乗船可能で、ポリネシアの伝統を反映した内装が施されているという。
チョープーの波(ポイント)は海岸線から約400メートル離れているため、ポイントにも一番近い宿泊施設として、選手やチームの多くがこのクルーズ船を活用すると見られている。チョープーでの大会競技中、沖にクルーズ船が停泊し、その船に選手たちが宿泊するのは初めてのこと。
しかし、数日間とはいえ大会期間の停泊中はクルーズ船のモーターが一日中稼働するため、海洋汚染の一因となりうる有害ガス排出においては、大気汚染や変化に敏感なサンゴ礁への影響なども懸念されている。
パリ2024オリンピックの選手村は、パリ市境から約2キロほど離れたセーヌ川沿いに建設されており、地下水を利用した地熱エネルギーによる冷暖房システムを用いるなど、エコ意識が注目されている。
タヒチ会場のクルーズ船停泊は、タヒチの環境、文化、住民の感情などを尊重しながら行きついた落としどころとも言えそうだ。
(THE SURF NEWS編集部)
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