2024年パリ五輪サーフィン競技の会場がタヒチ・チョープーから変更される可能性が浮上している。五輪に向け、現地のリーフ上にアルミ製のジャッジタワー建設計画があり、ローカルサーファーらが反対。抗議のSNSは世界中に広がり、地元政府も無視できない事態となった。結論は今月15日に発表される予定だ。
チョープーは沖合のリーフブレイクで、世界に類を見ない巨大で危険なバレルが特徴。五輪代表に内定した選手らは、この特殊な波への対応に重点を置き、トレーニングを積んでいる。
変更先として挙がっているポイントは、タヒチ内にあるビーチブレイク。より深く長いバレルを抜けられるかが勝負となるチョープーと、ビーチブレイクでのマニューバー対決では、メダル獲得に向けた戦術は大きく異なる。万が一、会場変更となれば、選手や関係者への影響は決して小さくない。
代替案はビーチブレイク「タハルウ」
変更の可能性は、タヒチの放送局「タヒチ・ヌイ・テレビジョン(TNTV)」が7日に報じた。
TNTVは、パリ五輪のサーフィン会場について、これまで、WSLのイベントで使われてきた既存の木製タワーを利用してチョープーで開催するか、タヒチの別の海岸にあるビーチ、タハルウで開催するか、二者択一としている。
根拠として、太平洋諸島フォーラムのためクック諸島を訪れた際のフランス領ポリネシアのモエタイ・ブロテルソン大統領の発言を紹介した。
大統領は「海へ行き、マタヒ・ドローレとジェットスキーに乗り、現場を見て回った」として、サンゴを壊さずにアルミ製タワーを建設することは不可能との見方を示し、選択肢から排除する意向を表明。
WSLの木製タワー利用も模索
その上で、既存の木製タワーの使用が認められなかった場合、「タハルウを代替地として提案している。ビーチブレイクで、陸地に必要な施設もあり、今日、私たちが抱える問題を避けることができる。これまでは不可能とされてきたが、環境問題と抗議が起きた今、再検討の余地があり、木製タワーが認められないなら、唯一の現実的な提案になると思う」と発言した。
現地でアルミ製タワー反対運動を展開する団体などによると、計画されている新タワーは高さ14メートルで、エアコン設備や水洗トイレを備える。建設費用は約7億円とされる。
反対署名は15万筆
チョープーのローカルサーファーとして知られるマタヒ・ドローレは、アルミ製タワーの建設が海の生態系、漁で生きる人々の暮らし、波の質まで変えてしまうと、10月半ば、インスタグラムで訴えた。
投稿には、メダル候補でもある各国の五輪代表選手、フィリペ・トレドやカリッサ・ムーアらが賛同。「いいね!」の数は、約12万に上った。また、アルミ製タワー建設に反対するオンライン署名は15万筆を超えている。
パリ五輪サーフィンの日本代表は、男子は五十嵐カノア、稲葉玲王、女子は松田詩野が内定。男女の残り1枠は、来年2月に始まるワールド・サーフィン・ゲームズ後に決定する。
(沢田千秋)
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