パリ五輪サーフィンの開催予定地タヒチ・チョープーで、環境破壊を懸念する抗議活動が起きている問題で、国際サーフィン連盟(ISA)が初めて声明を発表した。ISAは、サンゴの破壊を理由に、新ジャッジタワー建設準備を中断したフランス領ポリネシア政府の決断を支持するとの考えを示した。
ISAは、五輪競技連盟の一員として、サーフィン競技の実施に責任があり、競技会場や周辺整備は、パリ五輪組織委員会と地元政府が責任を負うと説明。これまでチョープーでのWSLの試合で使われてきた木製タワーは、安全基準を満たさないとしてポリネシア政府が却下し、組織委とともに新タワー建設を決めたと強調した。
その上で、「ポリネシア領で五輪を開催するとの提案があった当初から、ISAはチョープーの自然環境保護が最優先だと主張してきており、そのビジョンは、すべての関係者が賛同し共有していた。ポリネシア政府がサンゴ礁の破壊を受けて、(新タワー建設に向けた)試行と準備を中断した決定について、ISAはこれを歓迎し、すべての可能なオプションを考慮できるよう話し合いを推し進める」としている。
最後に「生涯サーフィンを続ける者として、私たちと将来世代のために海を守る取り組みに情熱を傾ける。サンゴや自然環境を守りつつ、競技を実施できるような共通の同意を見つけるため、すべての関係者と協働する」と結んだ。
ケリー・スレーターも反対
チョープーを巡っては、アルミ製の新タワー建設がサンゴを破壊し、海の生態系や地元の人々の暮らしに悪影響を及ぼすとして、抗議活動が起きた。
パリ五輪組織委は計画を見直し、当初案より小規模で木製の旧タワーと同程度の新タワー案を策定したが、地元の抗議は止まなかった。
サーフィン界のレジェンド、ケリー・スレーターも、チョープーのローカルサーファー、マタヒ・ドローレのインスタグラムに返信する形で反対を表明。「(五輪競技開催の)2日間のイベントのためにこんな巨大なタワーを作る必要性を理解できない。川の変異で洪水被害を受けた地元のためにお金を使ってほしい」として、木製の旧タワーか、その土台枠を補修して使うよう求めている。
また、2023年ワールドチャンピオンのフィリペ・トレドもこのインスタグラムに「多くの人々に声を届けてくれてありがとう」と賛意を示している。
五十嵐カノアも6日、インスタグラムのストーリーズを投稿。チョープーへの言及はなかったが、サンゴ保護活動に従事した際の写真とともに、「地元の生態系が守られる結論に至ることを望む」「私たちの声が聞き入れられ、母なる自然があるべき姿で残ると信じている」とメッセージを出した。
チョープーの抗議活動を巡っては、5度の世界チャンピオンを成し遂げたカリッサ・ムーアが、五輪をボイコットするとのネット記事が流れたが、カリッサは7日、この発言を否定した。
AFP通信によると、新タワー建設で使用する台船の試行段階で、サンゴが破壊される映像を地元の環境保護団体が公開。これを受けて、ポリネシア政府のモエタイ・ブロテルソン大統領が、建設に向けたテストと準備を中断している。
(沢田千秋)
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