2024年パリ五輪サーフィンの開催地、フランス領タヒチ・チョープーで、新しいジャッジタワーが完成した。タヒチの写真家ティム・マッケンナがインスタグラムで動画を公開した。
新タワーはアルミ製で、サンゴや生態系の破壊、波質の変化を引き起こすとして、地元住民やサーファーらが反対していた。
マッケンナは空中から撮影した新タワーと周辺の波の動画を投稿。投稿につけた文章は以下の通り。
「サンゴは最小限のダメージ」
「新タワーができあがった。波はこれまで通り完璧だ。建設用ボートのアクセス経路がラグーンに付いた後、サンゴ礁は最小限のダメージを負った。このラグーンのエリアに生息する魚の間で、シガテラ(食中毒を引き起こす汚染)が劇的に増えるかどうか、把握には一定の時間がかかる。
一方で、このアルミ製建造物はとても滑らかに見え、予想より早く完成した。タヒチは今や、“the end of the road”(チョープーの英訳)で、この先20年間サーフイベントができる素晴らしいタワーを手に入れた。タワーは旧タワーと同様、毎年、取り壊しの上、再構築される。
チョープーの村とすべての人々は、今年7月のパリ五輪でローカルサーファー、ヴァヒネ・フィエロとカウリ・ヴァアストが金メダルを取るために応援する準備ができている」
この投稿には、新タワー反対派からとみられるコメントが相次いだ。
投稿を「ゴミ」と非難
「水の中はどうなってる? セメントの基礎を見せて」
「ローカルたちは新しい建物を嫌い、防ごうとしたのに」
「こんなゴミを投稿するなんて信じられない」
これらに対し、マッケンナは一つ一つ対応している。
「それら(基礎)は2、3年でサンゴに覆われる」
「僕たちはそんなローカル知らないけど?」
「ローカルたちはチョープーで毎年サーフイベントをしたいから、タワーを必要としている」
チョープーの著名サーファー、マタヒ・ドローレは、自身のインスタグラムに新タワーの問題点を投稿し、世界中で拡散。環境保護団体が集める反対のオンライン署名も24万人を超えている。
マッケンナは、サンゴや生態系へのダメージを慎重に見つつ、サーフイベントの継続的な開催を望む地元の声を代弁しているようで、ローカルの間でも様々な意見があることがうかがえる。
ISAの提案は拒否
新タワー建設を巡っては、昨年10月、ドローレの投稿で問題が広く認識され、11月には、フランス領ポリネシア政府大統領が新タワーに反対し、木製の旧タワーの活用かチョープー以外での開催を要求。しかし、15年以上使われてきた木製タワーは耐久性と安全性に問題があり、五輪での使用は不可能というのが各関係機関の共通認識だった。
反対運動の広がりを重く見たパリ五輪組織委員会は、新タワー計画の変更を発表。チョープーの環境に配慮し、当初の計画より規模を縮小し、利用人数を制限。トイレのための水道管や汚水管の敷設も取りやめた。
それでも、国際サーフィン連盟(ISA)は新タワーを建設せず、陸からの望遠カメラを使用したジャッジなどを提案していたが、新タワーは計画通り完成した。
パリ五輪サーフィンは今年7月27~30日に予定され、日本からは五十嵐カノア、稲葉玲王、コナー・オレアリー、松田詩野の4人が代表に選ばれている。
(沢田千秋)