日本ではあまり事例はないものの、アメリカやオーストラリアをはじめとする海外ではサーファーがサメに襲われる事故が後を絶たない。南アフリカのJ-BAYで2015年に開催されたWCT世界大会のファイナルヒート中にミック・ファニングがシャークアタックに遭った事故は世界中に衝撃を与えた。
近年電気や磁気、音など様々な仕掛けでサメを寄せ付けないための装置が開発されているが、シャークアタックを完全に防ぐ手立てはまだ確立されていないという状況だ。
そんな中、オーストラリアのアデレードにあるフリンダース大学にて、シャークアタックによる被害を最小限に抑えるためのウェットスーツの開発が進められていることが分かった。
開発に携わっているチャーリー・ハヴェニアーズ教授は、「シャークアタックによる致命傷の多くが失血または出血性ショックによるもの。サメに噛まれた時の傷を最小限にとどめることで出血量を抑え、迅速な応急処置を行うことでシャークアタックによる生存率を高めることができると考えている」と、新素材のウェットスーツへの開発に大きな期待を寄せている。
この開発には、シャークアタック防止策の実施を掲げているニューサウスウェールズ州が9万ドルの資金を提供している。 開発中のウェットスーツには、強度に優れた素材でボディーアーマーや防刃ベストなどに利用されるケブラーに似た素材を活用している。サメに噛まれた時の衝撃は軽減できないため、骨折は免れないかもしれないが、致命傷となるような出血を伴う傷を最小限に抑えることが可能となる。
近々アデレード周辺のスペンサー湾にて予定されているテストの結果次第では、サーファーをシャークアタックの被害を軽減する新素材のウェットスーツが市場に出回るのもそう先のことではないだろう。
(ケン・ロウズ)