近年様々なマリンスポーツがハイドロフォイルの力を利用して飛躍的に発展している。セーリング界最高峰のアメリカズカップをはじめ、ウィンドサーフィンやカイトサーフィンもハイドロフォイルを採用し、2018年にはハワイのパドルボードレースMaui2Molokaiでマウイ島出身のサーファー、カイ・レニーがフォイルボードで新記録を樹立したことも記憶に新しい。
ハイドロフォイルのメリットとして、ある速度を超えてしまえばフォイル(水中翼)の浮力でボードが水面から離れ、水の抵抗がほとんどなくなる。そのため、空を飛んでいる感覚を楽しめるだけでなく、少ない力で速く、安定して走ることができる。フォイルの効率性があまりにも高く、うねりの力を利用して、波が割れていない外洋でも「フォイルサーフィン」を楽しむことさえできる。
一方では、風やうねりの原動力がない場合は、ひたすらアップスのような「パンピング」をしないと進まないのは大きなネックだ。そんな中、ドイツの自動車メーカーAudiが湖でもスイスイ走れる電動ハイドロフォイルボード「Audi e-foil」を発表。
開発をリードしているのはAudiでエンジニアとして働くフランズ・ホフマン氏。趣味のカイトサーフィンでハイドロフォイルと出会い、市販の物に対する不満から航空エンジニアの友人に協力を依頼、革新的なフォイルデザインを開発した。
当初は商品化を視野に入れていなかったが、新開発のフォイルがあまりにも上出来だったので、Audiの同僚からサポートを得ながら最新鋭の技術を利用した電動フォイルボードの開発に臨んだ。「私たちがe-foilを発明したわけではないが、3Dプリンターなどの最新鋭の技術を駆使して、既存の物よりはるかにパフォーマンス性と安全性が良いものができた」と自負する。
バッテリーはボードに内蔵され、手に持つリモコンでハイドロフォイルに搭載されている小型ジェット推進装置を操作する。安全性の高いインペラは6kWの推進力を持ち、最高速度は時速43キロと言われている。自らプロトタイプを試乗したホフマン氏は「バランスボードの上に立つよりも簡単だ。サーフィン経験者であれば、2・3日の練習でほとんどだれでも海面上を飛ぶことができるようになる」と言う。
今年中にAudi e-foilをテスト用に限定生産する計画だが、現在のところAudiから発売時期や価格についての情報はまだ公開されていない。
(ケン・ロウズ)