1935年にワイキキでトム・ブレイクが初めてサーフボードにスケッグ(フィン)をつけてから90年経とうとしている。当時の鉄製のキールから形が徐々に改善され、進化の過程で磨かれたイルカなど海洋生物のヒレを元にした形が定番となった。後にツイン、スラスター、クアッド、ボンザーなどいろいろなフィンの配置が生まれ、今では様々な大きさ、テンプレートやしなりのフィンを手軽に変えることができる。フィンのチョイスは様々あるが、本当に斬新なフィンを見かけるのはまれだ。
今期CTデビューしたカルロス・ムニョスが使用する「AU Fins」の一風変わった形状がちょっとした話題になっている。この湾曲したフィンは、サーフボードフィンの現状に新風を吹かせることができるのだろうか?
「AU Fins」はカリフォルニア、ダナ・ポイントの小さなフィン会社。フィンの特徴は何といっても中央にある波打つような湾曲で、地元サーファーのブラッド・ピアスが開発した。
ピアスは、同じく地元のケビン・ボルバがインドネシアから持ち帰ったS字に曲がったロングボードフィンを見て、ショートボード用に形を変えた試作品を制作。試作品が調子がよく、そこから数年間かけて改善を重ね今の形にたどり着いた。
その調子の良さは直感だけでなく、物理学的にも説明が付くという。ベースと頂点をほぼ垂直にすることでドライブ性を確保し、間の湾曲で水流に渦を作り、その渦がボードに揚力を与える。スピードが増すだけでなく、水流をサイドフィンの間にまとめることで安定性も増すと言う。
ネーミングのAUは金の元素記号から来ている。開発者がダナ・ポイントで営んでいる金の専門店から来ているとか。
2016年に発売されて以来、アマチュアのみならず、数多くのプロサーファーもテストして、反響は圧倒的にポジティブという。プログレッシブサーフィンの一人者、ネーザン・フレッチャーも試して、「早くて、ルースで、回転性もある。最近は頭ぐらいのクリーンな波で使ってるけど、めちゃくちゃ調子がいい。見た目が奇妙だけに、調子がいいのは驚きだ。」とサーファーマガジンに語っている。
▲クリス・ウォードやブルース・アイアンズもテストしいる動画が公開されている。
サーファーマガジンのザンダー・モートンもテストして、「1本目から違いが明らかで、スピードは15%増した感じがした。パワーのない波では重宝される。大きいターンもしっかりホールドしたけれど、スナップなど急なターンでは多少くっつく感覚があった。ポイントブレイクで乗ってみたい。」と語っている。
現在は、回転性が良い別のテンプレートも開発され、今はショート用3種類の他にSUP、シングルフィンも販売中だ。
最近のStabmagによれば、AU FinsがCT ルーキー、カルロス・ムニョスのメインスポンサーとなり、2年間数十万ドルの契約を結んだとか。
「最初見たときは興味があったけれど、疑いもあった。でも、いざ乗ってみると、「マジで速い!」と思った。それでスポンサー契約を決めて、CTで試す準備が整った」
―CTルーキー カルロス・ムニョス
今まではFCSのCRV(カーブ)フィンなど、新しいフィンのアイディアはちらほら出てきてはあまり大きなインパクトを与えないまま廃れて行ってしまった。AU FinsはCTレベルで結果が出れば史上まれにみる衝撃になるかもしれない。カルロスがどのような結果になったとしても、CT選手が試合で使用するフィンというだけでその機能性にある程度のお墨付きを与えることになるだろう。ボードデザインが多様化してきた今なら、試してみたい人も多いのではないだろうか。
ケン・ロウズ